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本編
友兄と恋人、だなんて……!
しおりを挟む何か、漸く……繋がった気がした。
「んっ」
いつの間にかソファに倒されてる体。
のしかかっている友兄の重みに、心地よさと恥ずかしさを覚える。
友兄からの口付けは深くなる一方で、口の中で自由に動き回る舌に翻弄され続けてる。
俺は友兄にしがみつくのが精一杯だった。
「は……」
苦しくなって逃れようとしても、友兄の唇はすぐに俺を追ってくる。
唇と唇の間で、やたらと湿った音がする。舌を絡めているから当然と言えば当然かもしれない。
その音は耳に大きくなって入ってくる。他に音がない。三階だからなのか、車の音も、外の喧騒も……何も入ってこない静かな部屋。
この世界に存在しているのが、友兄と俺しかいないみたいに。
ただわかるのは、友兄の舌がすごく熱いこと。
どこまで奥に入ってくるつもりだろう……って思うほど、深く深く探ってくる。歯列を辿ったかと思ったら舌に絡んで、そうかと思ったら上顎を舐められる。
心臓の、ドクンドクン…って音が、でかい。
友兄の背中にまわした手には、友兄の鼓動が伝わってくる。
「ん……んふっ」
キスをしているところだけじゃなくて、体中あっちこっちが甘い熱に襲われてた。
頭はぼーっとなって真っ白な霞みがかかってる。
キスの合間に目を開けると、意外と長い睫の友兄の瞳が俺を見ているからドキリとする。
それから、目を閉じられなくなった。
いつまでも、この瞳を見ていたくて。
唇が痺れたような感覚がしたころに、漸く唇が離れた。
俺を見下ろす友兄の濡れた唇が、妙に艶めかしく映る。
「嫌じゃない?」
「……うん。……嬉しい」
頭の中はまだぼーっとしてる。
友兄はそんな俺の背中に両腕をまわしてきて、抱きかかえるように俺ごと体を起こした。
「理玖」
そのまま、ぽすっと友兄の胸の中におさまってしまう。
額に、友兄の鼓動を感じた。
意外に早い鼓動を感じていると、少しずつ気持ちが落ち着いてくる。
「母さんたちには秘密が増えるかな」
「……なんで?」
「俺と理玖が恋人同士になりました……なんて宣言したら、何を言われるかわからないから」
長い指で俺の髪を弄りながら嬉しそうに友兄は口にした。
恋人。
……って言葉に、顔から火が出そうなくらい熱くなる。
「恋、人」
「そう、恋人」
兄弟からの格上げは非常に嬉しいのだけど……、実際意識すると、すごく……恥ずかしくて。
「そ、っか。うん、えっと……」
好きだと言った。好きだと言われた。それから、あんな深くて気持ちのいいキスもした。
だから、「恋人」って言われて…嫌なわけじゃない。けど、そうか、そういうことになるのか……って思ったら、途端にドキドキが強くなってしまって。
「理玖」
「な、に!?」
「可愛いよ、とても」
「!」
友兄はそんな俺の様子を笑いながら見ていた。
「照れて真っ赤になって挙動不審になってる理玖は、すごく可愛い」
「……友兄っ!!」
「でも、そんなんじゃ、すぐばれちゃうよ?」
責めてるわけでも諌めてるわけでもない。
友兄はずっと楽しそうに笑ってる。嘘偽りのない笑顔。
「……も少ししたら、慣れるから、平気っ」
本当は自信ないけど。
だって、そうと意識してしまったら、余計に友兄が格好良く目に映ってる。友兄の姿を見るたびにきっとドキドキして、顔が赤くなる。
「本当に、慣れる?」
「うん」
「キスだけでこんなに蕩けた顔してるのに……大丈夫?」
「う」
詰まってしまった俺を、友兄はまた笑う。
それから、ぎゅ…って強く抱きしめてくれた。
「好きだよ」
「友兄…」
「とても、好きだ」
「…うん」
「理玖」
また、唇が重なる。
触れるだけの。
でも、とても熱い…キスだった。
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