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本編
友兄は俺の素敵な恋人
しおりを挟む友兄と過ごしてる間は、俺にとってすごく大切で、幸福なものになっている。
甘いお菓子と甘いココアは相変わらず俺のために用意されていて、子供扱いがどうこう言うより、友兄に甘やかされてるんだなぁ…ってことを実感していた。
終業式を翌日に控えた木曜日。
俺たち三年は最後の部活になった。
後輩たちから一斉に「ありがとうございました!」って言われて、涙ぐむやつもいた。
とりあえず俺はホッとしたかな。七月に入ってから部活休むことが多くなったから。塾にも通ってないのに、なんか理由が理由だけあって申し訳ないような気がしてたから。
「あ、あの、矢坂先輩…!」
「え?」
友兄が迎えに来てるし、さあ帰ろう…って更衣室を出たら、マネージャーの平田さんが俺を呼び止めてきて驚いた。
「あの……っ」
どうしても…ってお願いされて、ちょっと人気のないところまで連れてこられた。なんだろう。
「矢坂先輩……、私、ずっと矢坂先輩のことが好きでした……!!」
「え」
いきなりの告白だった。……あ、いや、告白なんていきなりが当然か。
「先輩、私のことたくさん気遣ってくれたじゃないですか…!もし、私のことが嫌いじゃないなら、お付き合いしてくれませんか…?」
気遣った覚えはないんだけど。女子には優しくすべしって思ってただけで。
「えっとね」
「はい」
「俺、恋人いるんだよね」
「…え?」
「すごく素敵な人でさ。俺、その人のこととんでもなく好きだから、諦めて別の人探して?」
「え、え」
「じゃあね。あんまり遅くならないように帰って。家族の人心配するからね」
「え、え?」
呆然とする彼女に手を振ってその場を離れたら、近くに友兄が立っていた。
「友兄!」
「おかえり、理玖」
友兄は普通に俺の頬にキスをして、手荷物をさらっと奪い取っていく。
「車で待ってると思った」
ぎゅっと手を繋いで。
「待ってたけど、中々出てこなかったから。……心配になって迎えに来たら、彼女とこんなに人気のないところに向かう理玖を見つけて、追いかけてきたんだけど」
友兄は俺を見た。
口元に、笑みが浮かんでる。
「理玖の素敵な人って誰?」
「は?」
「恋人って、誰?」
話してる間に車について。
いつもどおり助手席に押し込まれて。
「理玖」
「そんなの」
ちらっと見たら周りに人はいなかったから。
「友兄のことに決まってる」
って言い切って、自分から友兄にキスをした。
「……大好き、友兄」
「理玖」
嬉しそうに微笑んだ友兄からも、触れるだけじゃないキスをされた。
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