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幼馴染み二人と冒険者になりました!
17 癒やし待機……してますけど
しおりを挟む少し大きなテントを設置して、焚き火を用意して、二人は外套を脱いだ。動きやすそうなシャツと、胸当て。それから、手を覆う小手と、膝上まで覆うブーツ。冒険者の基本軽装備、らしい。
寒くないのかな。心配。
「さてと」
「フィーはここにいてね」
「うん」
「遠くにはいかない。見える範囲にいるから」
「うん」
二人が交互に僕の頭をなでて、手を離すと二人の足元にふわりと風が纏わりついた。そしたら、飛ぶように二人が移動を始める。魔法ってほんとすごいなぁ。
スノーラビットってどんな魔物だろう。僕の外套とかが真っ白なふわふわの毛皮だから、そういうのだと思うけど。
薪を一本火に焚べたとき、ディーが向かった先から白い毛玉みたいなものが転がり出てきた。あれがスノーラビットなのかな。
ディーは躊躇うことなく大剣を振り下ろして、首を飛ばす。
スノーラビットは獣型の魔物。胴体はすぐに動かなくなる。
そんなに大きくはなくて、僕でも一匹くらいは両手で抱えられるくらいの大きさだと思う。
耳が長くて尻尾が丸くて、小型で真っ白でふわふわ。……なんか、魔物に見えない。魔物と呼ばれるような凶悪さは全然感じないのに。でも魔物だから討伐対象。
動物と魔物の境目ってほんとよくわかんない……。
「フィー、動かないでね」
「うぁ?」
ディーが次々と魔物を倒してる姿を見ながらもの思いにふけっていたら、エルの声に現実に引き戻された。
エルの声には焦りも何もなくて、ただ平然としていたら、パチって感じの稲妻が僕の傍を走って、後方に落ちた。
何が起きたんだろ。
恐る恐る後ろを見たら、それなりに黒焦げになったスノーラビットがいた。
「……あ」
「怪我はない?」
「うん」
「そいつら、見た目は可愛いけど凶暴だから気をつけてね」
「わかった。ありがと、エル」
「ん」
頬に音を立ててキスをされた。
戻っていくエルを見送ってから、黒焦げスノーラビットを改めて見たけど、鋭くて太い牙が並んでて、目は禍々しい赤色をしてる。額には鋭い角が。
「……あ、これ魔物だ」
うん。これは魔物だ。簡単に肉も骨も噛み砕かれるやつだ。
僕、ぼーっとしてる場合じゃない。一度でも噛みつかれたら大怪我しちゃう。
ぎゅっと手を握りしめてディーとエルから目を離さないように討伐する姿を見てた。
怪我をしたらすぐに癒せるように。
すぐに。
「ディー、そっちに二匹抜けられた」
「あいよ」
すぐに……。
「エル、追加五匹」
「はい了解、っと」
すぐ……?
「結構いるな」
「んー、でもそろそろ打ち止め…、フィー、動かないでよ」
……と、今度は僕の右後方に稲妻が走って。
プスリと煙を上げるスノーラビットが二匹。
……凶暴、何だよね?
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