220 / 247
幼馴染み二人と冒険者になりました!
12 初めての依頼達成
しおりを挟む「…えと、協力……って?」
「同じ依頼を受けるわけじゃないし、組むわけじゃないけど、たまたま同じ場所に居合わせたら依頼に関係なく手助けしたり、かな」
「そういうの、あるの?」
「まあ、あるね」
「そうなんだ…」
エルが言うなら確かだよね。
ん、協力、大事。
「協力なら……いいと思う」
「ありがとうございます……めが、…ラルフィン!!」
大きな声にちょっとびくっとした。
悪い人じゃないのはわかってる。
この二人、黒くないから。真っ白、ではないけど、真っ白な人なんて、神官さんにも少ないくらいだし。
「そろそろ戻るか」
ディーが僕の頭を撫でた。
「うん」
帰りたい。
お風呂入りたいよ。
「二人もそろそろ戻った方がいい。日が暮れるとこのあたりは魔物が増える」
「ああ。そうするよ」
「というか、帰る場所同じなんだから一緒に――――」
話の途中でディーにひょいっと抱き上げられた。
エルが荷物の確認をして、僕たちに寄り添う。
「それじゃ、お先」
「「え」」
ミルさんとラドさんに手を振った。
それからすぐにエルの風魔法が発動した。
僕はぎゅっとディーの頭にしがみつく。
これ、結構怖いんだよ。
もうぴょんぴょん飛ぶように移動するから…。
「……は?」
「まじ?」
……っていう二人組のつぶやきは、風を切る音で僕には聞こえなかった。
東門に戻るまで、あっという間。
門をくぐるときには魔法はきっていたから、普通に歩いて門をくぐったけど、僕はやっぱり抱っこ状態だった。
出るときと同じ門番の兵士さんが、すごーく労し気な、微笑ましそうな顔で見送ってくれた…。もう…。
「エル、キノコ以外は何か買うものあるか?」
「んー、多分大丈夫かな。そろそろスノーラビットの時期だねぇ。キノコ塩漬けして残して、ラビット肉手にいれたら一緒に煮込むかなぁ」
「美味しいの?」
「美味い」
「美味しいよ」
「食べたい」
エルの料理ならなんでも美味しいけど。
「楽しみ!」
「だな」
「あー…手、抜けないじゃん。抜く気もないけど」
って笑いながら西町に入って、暁亭に戻った。
店主さんに依頼のキノコが入った袋を渡すと、店主さんはその中身を確認していく。
「ん、状態もいいな。依頼完了だ」
「おー」
「初依頼お疲れさん」
って、頭ぐりぐりなでられた。
初依頼終わったんだーって嬉しくてにまにましていたら、店主さんがカウンターの上に袋を置いた。
「これ、なに?」
「……フィー、依頼ってのは、あくまでも仕事の依頼。仕事をこなせば報酬が出るのは当たり前だろ?」
「そう…なの?」
「うん、そうなの」
ディーとエルに、苦笑されながら説明されてしまった。
「そういうこと。つまり、これが坊主の初稼ぎってことだな」
「僕の……」
袋を手にもった。
そんなに重くはないけど。
でも、僕、初めて自分で稼いだお金だ……って思ったら、もう嬉しくて。
そりゃ、自分一人でどうにかなった依頼ではないけど、それでも、嬉しくて。
帰りに二人に何か買ってあげたいな…って思った。
3
お気に入りに追加
1,336
あなたにおすすめの小説
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
物語なんかじゃない
mahiro
BL
あの日、俺は知った。
俺は彼等に良いように使われ、用が済んだら捨てられる存在であると。
それから数百年後。
俺は転生し、ひとり旅に出ていた。
あてもなくただ、村を点々とする毎日であったのだが、とある人物に遭遇しその日々が変わることとなり………?
【本編完結】再び巡り合う時 ~転生オメガバース~
一ノ瀬麻紀
BL
僕は、些細な喧嘩で事故にあい、恋人を失ってしまった。
後を追うことも許されない中、偶然女の子を助け僕もこの世を去った。
目を覚ますとそこは、ファンタジーの物語に出てくるような部屋だった。
気付いたら僕は、前世の記憶を持ったまま、双子の兄に転生していた。
街で迷子になった僕たちは、とある少年に助けられた。
僕は、初めて会ったのに、初めてではない不思議な感覚に包まれていた。
そこから交流が始まり、前世の恋人に思いを馳せつつも、少年に心惹かれていく自分に戸惑う。
それでも、前世では味わえなかった平和な日々に、幸せを感じていた。
けれど、その幸せは長くは続かなかった。
前世でオメガだった僕は、転生後の世界でも、オメガだと判明した。
そこから、僕の人生は大きく変化していく。
オメガという性に振り回されながらも、前を向いて懸命に人生を歩んでいく。転生後も、再会を信じる僕たちの物語。
✤✤✤
ハピエンです。Rシーンなしの全年齢BLです。
11/23(土)19:30に完結しました。
番外編も追加しました。
第12回BL大賞 参加作品です。
よろしくお願いします。
星は五度、廻る
遠野まさみ
キャラ文芸
朱家の麗華は生まれ落ちた時に双子の妹だったことから忌子として市井に捨てられ、拾われた先の老師に星読みを習い、二人で薬売りの店をきりもりしていた。
ある日、捨てた筈の父から、翠の瞳が見たいという皇帝の許に赴くよう、指示される。
後宮では先住の妃が三人いて・・・?
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる