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幼馴染み二人と僕の15歳の試練

8 一人でぐるぐる

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 はぁ~終わったぁ~。
 皆さんに手伝ってもらって大まかには荷物整理は終わってたけど、そこから、部屋の中を確認したり、細々としたものの位置を変えたり、なんか大変だった。
 まだお昼の鐘四の鐘は鳴ってないから、お昼はもう少し先のはず。
 でも僕は疲れ切ってベッドの上に転がってた。


 ディーがいたら頭を撫でてくれるかな。
 エルがいたら、紅茶淹れてくれるかな。

 僕、十五歳になっても、二人に甘えっぱなしだなぁ。

「何してるかな……王都に戻ってきたかな……」

 今月の逢瀬のあとすぐに、ディーとエルは依頼で少し離れた街まで行ってる。
 予定だと二十の日までに帰ってくるはずなんだけど…、まだ帰ってきた手紙は来ない。

「んー……」

 手紙、来なくてもいい。
 夜には僕からの手紙書こう。
 暁亭に送れば、店主さんがちゃんとしてくれるし。
 また少し頑張れば、秋の三の月の一の日だから、会える。
 会いたいな。
 会いたいよ。

「会いたい……」

 ぐす……って、なんか涙が滲んできた。
 あ、また寂しい周期になったのかな…。時々くるよね…これ。
 相変わらず、僕は甘えたがりで。
 二人の手を握ってないと、不安で仕方なくて。
 会うのは月に一度。
 たくさん恋人の触れ合いをして、話をして、キスをして、また話をして、抱きしめてもらって。
 体中すごいことになって。
 心の中はとっても満たされてて。

『フィー、愛してる』
『フィー、大好きだよ』

 傍にいないと心も離れちゃうんじゃないかって思ったけど、そんなこと、全然なくて。

「ディー……エル……」

 二人のこと想っていたら、涙が引っ込んでくれた。
 寂しいのは、寂しいけど。
 胸の中が、ポカポカしてくるから。

「贈り物……どうしよう……」

 考えなきゃね。
 二人のことを想って、僕ができること、用意できるもの。

「大丈夫。寂しくない」

 ほんとは、寂しい。
 けど、大丈夫。
 だって、二人のことを考えていたら、こんなにポカポカするんだから。

「……あと、一年……」

 あと一年で、僕はここを出る。
 癒やしが使えなくても、十六歳で冒険者になることは決めてることだから。
 でも、頑張らなきゃ。
 癒やしを使うための条件みたいなものを聞いたこともある。けど、みんな、女神さまの声に耳を傾けるだけだ、って。
 でも、それってみんなやってることだよね?僕だって、やってると思う。けど、癒やしはまだ使えない。
 中位から高位にあがる条件の一つに、癒やしが使えるかどうかっていうのがある。だから、何か、あるはずなのに。座学と違って、これは自分で感じ取るしかないとか、ひたすら女神さまに祈るしかないとか、そんなことばかり。

「わかんない……」

 ある日突然その理を知る。
 だから、焦らなくていい。
 僕には既にその下地はできている。

 ………って、神殿長さんには言われたけど、やっぱり、わからないことばかり。

 理って何?
 下地って何?

 神殿長さんはそれ以上の助言はくれない。
 たまに神殿で会うクリストフ殿下とも癒やしの話をしてみるけど、殿下にもよくわからないって。そもそも低位しか持っていない自分に聞くなと、額をこづかれた。痛くはなかったけど。

「ん。やるしかない」

 前を向こう。
 大丈夫。
 まだまだ知らないことがたくさんあるんだから。
 全部全部、知っていけばいい。

 ……そうですよね?
 女神さま。


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