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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
2 15歳の朝
しおりを挟む起床の鐘だから、廊下を行く人は少ない。
時々会う人に朝の挨拶をしながら礼拝堂に向かったら、神殿長さんと、現在神殿にいる中位、高位神官さんたちが勢ぞろいしてた。
三の鐘のあとの勉強会や奉仕活動、儀式とか色々な場面で会った人ばかり。
「おはようございます。すみません。遅れましたか?」
「おはよう。遅くないよ。こちらへおいでラルフィン君」
神殿長さんを皮切りに、皆さんからおはようと、返される。
僕、何かしでかしたんだろうか。
「ラルフィン君、そこで祈りの姿勢を」
「はい」
神殿長さんに促されて、彼の前で膝をつく。
たったこれだけで、ざわついた心が落ち着いた。
いつものように、目を閉じる。
そしたら、頭に神殿長さんの手が置かれた。
「ラルフィン君――――ラルフィン、本日、秋の二の月、二十一の日。十五歳となった君に、中位の神官位を認めるものとする」
あ、忘れてた。
そっか。
僕、今日が誕生日だ。
今月の一の日に二人に会ったときに当日は会えないから、ってお祝いされてたのに。すっかり忘れてた。
そして、誕生日以外に何か、重要なことを聞いた気がする。
「異義のある者は?」
「ありません」
「異議なし」
「歓迎します」
……っていう、神殿長さんの言葉の後に続く、他の神官さんたちからの言葉。
……ん?
「え、と……?」
思わず目を開いて神殿長さんの方を見てしまった。そしたら、神殿長さんの苦笑と周りの人たちから笑い声。
「こんなに締まらない授位式は初めてだ」
怒らせてしまったかも…と思ったけど、礼拝堂の中にはのんびりとした空気が漂っていて、僕の肩からは力が抜けた。
「ラルフィン、君は今日から中位神官として、その責務を果たすように」
「え」
「とは言え、不慣れなうちは誰かが君に付き添うから。あまり身構えず、今まで通り皆の心に寄り添えばいい」
あまりのことに少し呆然としてた。
僕、まだまだわからないことも多いのに。
中位…ってことは、勉強会では、教わる方ではなくて教える方。奉仕活動でも、神殿内ばかりでなく、外に出ることも多くなる。……まあ、今までも同行してたし。
「あ……もしかして、外に出ることが多かったのは」
そういえば、キリル君とか、他の見習いさんや下位の神官さんの姿は見なかった。いつも、中位、高位の方々と一緒で…。
「ラルフィン、一年前、君がここに来たときに、私は伝えたよね?君には既に中位神官としての力があると」
「はい……」
「けれど、何も知らない君にはまず色々と知ってもらわなければならない。それに、ここにいる神官たちにも、君の力を認めてもらわなければならない。…この一年で良く学んだね。君は間違いなく、女神様の愛子だ」
僕は神殿長さんから、まわりに視線を移した。……確かに、みんな笑顔で、その裏もなさそうに感じる。嫌な人に会った時に感じる、黒いモヤっぽいものがなにもない。
さっき神殿長さんの言葉に同意していた言葉は、本心からだとよくわかる。
認められて、受け入れられた。
僕のやってきたことは無駄じゃなかった。
何かむず痒いような暖かな気持ちになって、僕はすっと目を閉じる。
色々大混乱していた心の中はシン…っと静まり返った。
優しい笑い声に包まれていた礼拝堂の中も、水を打ったように静かだ。
「僕の祈りが、女神さまの御力が、大勢の方に届くように尽力します。これからも女神さまの御手をお借りして、――――祈り、続けます」
もしかしたら、受ける側としての正式な文言があったかもしれない。
けど僕はそんなこと聞かされてないし、そもそも、今日こんなことになるなんて思ってもいなかった。
だから、僕の言葉で。
大切な、人のために祈り続けることを、宣誓の様に口にした。
ふわりと光が舞う。
それは、女神さまが、僕の言葉に喜んでくれているように見えた。
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