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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります

22 涙が止まらなくなった

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「さ、引き止めて悪かったね。今日の分はおわり。君も部屋に戻って休んでいいよ」
「はい!ありがとうございました、ロイクさん」
「君が早く次の段階にすすめるよう祈ってるよ」

 にこっと笑って背中を押してくれた。
 僕は立ち上がって頭を下げて、ロイクさんにもう一度お礼を言ってから礼拝堂を出た。

 あと、どれくらい時間あるかな。
 手紙書く時間あるかな。
 伝えたい。二人に、さっきのこと、伝えたい。
 僕、一步前進できたよ。
 まだまだだけど、約束に近づけたんだよ。
 よくやった、って褒めてくれるかな。頑張ってるね、って頭をなでてくれるかな。

 早足で部屋に向かってたのに、ゆっくりになっちゃった。

 とぼとぼと部屋に入る。

 机について、便箋を用意した。
 僕、結構楽しくやってるよ、って。
 今日、できることが増えたよ、って。

 ペンを持ったまま、一文字もかけなかった。
 その代わり、真っ白な便箋の上に、ぽたぽた涙が落ちていく。

 二人がいない。
 僕のことをなでてくれる手も、ぎゅってしてくれる腕もない。抱きつけないし、キスもできない。

 涙が止まらない。
 なんでいきなり、こんなに寂しくなっちゃったんだろう…?

「ううー……」

 無理やり止めようと思っても止まらない。何度も拭ってみたけど、溢れてくるばかり。

「ディー……エル……、会いたい……っ」

 寂しい。
 寂しいよぅ。
 一人じゃやだ。
 ぎゅってしてほしい。

 どうやったら涙が止まるのかわからない。
 ただ呆然と便箋に落ちる涙を見てたら、六の鐘が鳴った。
 …どうしよう。鐘の音を聞いても涙が止まんない。

 きゅって苦しくなる胸を抑えていたら、部屋にノックの音がした。

「はい…」

 扉を開けたら、キリル君がいたけど、僕を見るなりぎょっとした顔になった。

「え、なに、どうしたんだよ、どこか具合でも悪いのか?」
「……違う、けど、とまんない……」

 拭ってもパタパタ落ちる涙。

「……ちょっとこいよ」

 ひっくひっくとしゃくりあげながら、扉を閉めてキリル君についていった。
 キリル君は時々僕の方を確認しながら歩いて、神殿長さんの執務室まで僕を連れてきた。

「キリルです」

 キリル君がノックをしてそう声をかけたら、扉が開いた。

「キリル君、どうしたの………って、ラルフィン君?どうしたんだい、そんなに泣いて」
「泣き止まないんで、連れてきました」
「ああ、うん。それじゃ、キリル君は戻って。ラルフィン君、中に入りなさい」

 こくこく頷いて、促されるままに部屋に入った。
 ソファに座っても、涙が止まらない。

「一体どうしたの。なにかあったかい?」
「なに、も………、ただ、寂しくなって…」

 神殿長さんは、うんうん頷くと、僕の頭を軽くなでた。

「ラルフィン君、ちょっと待っててくれるかな」

 僕がうなずくと、神殿長さんはニコリと笑って部屋を出ていった。


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