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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります

8 キリル君

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「さ、ここが君の部屋になるからね。神官服はこれから手配するから。そこのクローゼットに私物を仕舞っていいからね」
「はい」

 二人とお別れしてから、苦笑した神殿長さんに頭を撫でられた。
 それから、宿舎に案内されて、僕の部屋を教えてくれた。

「また後でね」

 神殿長さんはそう言うと、お部屋から出ていったので、とりあえず荷物を片付ける。

 お部屋の中には、ベッド、こぶりなクローゼット、トイレ。お風呂……は、ない。んー、後で教えてもらおう。
 あとは、簡易水場があるから、気をつければここで洗濯はできるかな。

 僕が持ってきた私服はクローゼットの中に入れる。
 陶器のコップは水場の近くに。
 あー、ポットとか持ってきたらよかったかな?紅茶……飲みたいなぁ。

 持ってきた荷物なんてそれほど多くはなくて(だって、背負い袋一個分だよ…?)、片付けはあっという間に終わっちゃった。

 さてどうしよう…って思っていたら、トントンって、ノックの音がした。

「はーい?」

 扉を開けたら、手に荷物を持った神官服を着た男の子……?僕と同じくらい……かな?

「あんたがラルフィン?」
「え、あ、うん。僕だけど…」
「はい。これ神官服。一応三着ある。これに着替えたら中の案内するから」
「えっと……、え?うん……、ありが、とう?」

 僕にむかって差し出された白い服。なので、受け取ったはいいけど、えーと、誰?

「………」
「………」
「はやく着替えろよ」
「え?あ、うん」

 なんだろう。
 なんでこんなに不機嫌?
 それに、着替えろ、って言う割には部屋から出て行ってくれないんだけど…。
 僕、二人から、人前で脱ぐな着替えるなって言われてるんだけどな……。

「えーっと」
「なんだよ。着替え方わからないわけ?」
「あ、いや、多分大丈夫なんだけど、えっと……、部屋から出てくれない…?」
「!!」

 その子は、僕の言葉にはっとして、真っ赤になって部屋から出ていった。
 え、えっと、僕、悪くないよね?

 とりあえず、着替えをすることにした。
 神官服…と言っても、ばさっと頭からかぶるタイプの簡単なものだった。…子供仕様なのかもしれない。神殿長の服とか、もうちょっと複雑だった気がするから。
 長さは、足首が出るくらい。
 かぶる服は半袖で、その上から羽織る上着は長袖だった。
 下は膝までの短いズボン。
 あと、サンダルもあったから、それに履き替える。
 ……うん。多分、いい。

「あの~」

 恐る恐る扉を開けたら、服を持ってきてくれた子が、壁に背中をつけて待っててくれた。

「着替えました……」
「見たらわかるよ」
「そ、だね……」

 うう、怖いよ。
 それに、名前もわから…………

「俺、キリル。16歳だ。見習いになったばかりで、神殿長から、歳が近いから少し面倒見てくれって頼まれた」

 って、突然の自己紹介に、ちょっとびっくりした。

「あ、えっと……、はい。キリル君……。僕、ラルフィンです。14歳になったばかりで」
「知ってる。ほら、中のこと案内するから。行くぞ」

 って、なんか右手を出されたんだけど、手を握る気にはならなくて、申し訳ないけど頷くだけにした。
 キリル君は僕が手を繋ぐ気がないとわかったみたいで、また顔をしかめて、歩き始めた。


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