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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります
7 少しの間…お別れ
しおりを挟む「僕、やだ……一人じゃ、やだ……っ!ディーとエルと一緒にいたい……!!」
「フィー…」
「落ちついて、フィー…」
二人は僕を抱きとめてくれた。
少し困ったように、背中をなでてくれる。
「笑顔で、って言ったのに」
「甘えん坊だね…フィーは」
「だって……だって……っ」
二人がいなくなる気がした。
いつもいつも二人がそばにいてくれたから、僕、ずっと幸せだった。
その二人がいなくなったら、僕、どうしたらいいかわからなくなる。
「お願い…っ、僕、なんでもできるようになるから…!僕のことおいていかないで……!!」
必死にしがみついていたら、二人から『くす』って笑う声がして、僕の目からもっと涙が流れ落ちた。
おいていかれるんだ。
僕、ここに一人で残されるんだ。
「ディー、エル」
声が震えた。
どうしてわかってくれないの……って思ったら、ディーが僕にキスをしてくれた。
ふわふわの、とっても優しいキス。
「ディー…」
ディーが離れたら、今度はエルが。おんなじ、ふわふわの優しいキスをしてくれた。
「エル……」
笑った二人は、僕の目元にキスをする。……涙が、引っ込んでいく。
「フィー、なんで二度と会えないようなお別れ方するかな…」
「え?」
「おいて行かないでほしいのは、むしろ、私達だよ?」
「なんで?」
意味がわからないよ。
だって、僕は一人なんだもん。
二人はずっと一緒なのに。
「俺たちはまだ冒険者になったばかりだ。見習いみたいなものだよ。けど、フィーは、もう神官として認められただろ?……見習いでもなく、上級神官にも引けをとらないものも持ってる」
「うん……」
「だから、私達はこの二年でフィーに追いつかなきゃならないんだよ?そうしないと、私達は恥ずかしくてフィーに結婚も申し込めない」
「……え?」
「なぁ、フィー。自分の色のアクセサリーを人に贈る意味、知ってるか?」
「……知らない」
「お互いの色をお互いに同じアクセサリーで身につけるのは、婚約の意味だよ、フィー」
「……え、え?」
「だから、そういうこと。いい加減意味をわかってほしいな、フィー」
「仲のいい幼馴染だけじゃ、もう私達は満足できないんだよ」
ディーとエルが、僕の耳元に口を寄せてきた。
ちゅ……って、ピアスのとこにキスされる。
結婚、とか、婚約、とか。
………流石に、僕にも意味は、わかる、けど。
わかったらわかったで、僕は顔から火が吹きそうなほど真っ赤になってた……と、思う。
「まあ、ピアスは、俺達が何も伝えないで贈ったものだから、あまり気にしなくていいけど」
「二年後にはちゃんと申し込むからね?それまで返事を考えておいて?」
「あう………」
ぽんぽん……って、二人に頭を撫でられた。
「ま、来月まであと10日くらいか?そのときはまた会えるからな。一月分たっぷり可愛がってやるから」
「はぅ」
「逃げたらだめだよ?毎月ちゃんと可愛がってあげるからね?」
「うぅ」
なにこれ。
なんで?
すごく、恥ずかしい。
「「フィー、愛してるよ」」
「ううう」
ちゅ、ちゅ、………って、たくさん、キスされた。
「返してくれないのか?」
「ほら。『特別』なこと、して?」
「うううぅぅぅっ」
すごく、胸がどきどきする。
いつも、もっと、簡単にしてたのに。
どきどき。
もぉ、だめ。
なんか震えながら、二人の頬に少し、少しだけ、キスをした。
「……まあ、いいか」
「フィーが私達のこと意識しまくってるってことだもんねぇ」
もーやだ。
どきどきは落ち着かないし、顔は熱いし、ディーとエルにおでこにキスされて、もっとどきどきが強くなるし。
「ほら、もう寂しくないだろ?」
「もう大丈夫だね?フィー?」
「うん………大丈夫……」
胸の中でぐるぐるしてた悲しさは、もうなくなってた。
「出かける時はなんていうんだっけ?フィー」
「フィーに見送られたら、私達はいつもより頑張れるなぁ」
笑う二人に、僕も笑い返す。
「いってらっしゃい、ディー、エル」
「「うん、行ってきます。フィー」」
今度こそ本当に、僕は二人を見送ることができた。
寂しいとか、悲しいとか、言ってられない。
だって、二人への返事、考えなきゃ……って、もうそのことばっかり気になってたから。
あのね、ディー、エル。
僕ね、すごく嬉しかったんだ。
だから、だからね?
お願いだから、危ないことはしないでね?
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