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幼馴染み二人と豊穣の国の王都に着きました

9 手合わせの前に。……僕、ほぼ空気。

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「そーいや、名前聞いてなかったなぁ」
「ディオルグ」
「エルフィード」
「出身は?」
「ゲールデンのユファ村だ」
「3人とも?」
「ああ」

 お店の奥の扉の向こうは、広場になってた。
 地面はボコボコしてて、土がむき出し。それに、周りの様子が見えないくらい高い壁で囲われてる。
 僕は扉の近くに立っていて、ディーとエルと店主さんは、広場の中央に立っていた。

「そりゃ、随分と遠くから来たな…。ゲールデンでも冒険者登録できるだろ」
「フィーを預けられる神殿が、この国の神殿だった。それに――――レヴィ殿にも会ってみたかった」
「ほう?」
「俺はもっと腕を磨きたい。フィーを守りたいから。だから、レヴィ殿から剣術を学びたい」
「守りたい、ねぇ。エルフィード、お前さんもか」
「私はどちらかと言うと、店主の魔法師としての力に憧れています。私には『師』と呼べる人はいませんでしたから。剣の腕も魔法の腕も上げたい。これを両立できるのは、店主しか見つかりませんでしたから」

 ……なんか、僕、緊張してきた。
 店主さんはちらりと僕を見て、すぐに二人に向き直った。

「あの坊主、お前らにとってなんなんだ?」

 なんなんだ……って、幼馴染ですよ?
 でも、ディーもエルも即答しない。なんで?

「………………………恋人……、予定」
「現状、どうしようもないくらい幼馴染枠から昇進させてくれないけど……」

 なんで二人ががっくり肩を落としてるのかわからない。
 恋人予定ってなんのこと。幼馴染枠?から昇進て、なんのこと。

「あーーーーー………、うん。すまんな。まあ、頑張れや?」
「ぐ……」
「……刺さる」

 店主は大笑いしながら、腰にしていた剣を引き抜いた。
 その途端、二人ともきりりっとした雰囲気に戻って、大剣と双剣を手にする。

「俺のことはどうやって知った?」
「俺が。神殿のことも、国のことも、この宿についても、……レヴィ殿のことも、村に来る商人たちから、様々な情報を得た。本当なら、自分の足で調べたかったが、村から出るわけに行かなかったからな。……情報の齟齬を確認するのは大変だったが」
「ディオルグの方か…。外見だけじゃ、そういうのが得意そうなのはエルフィードの方なんだがな」
「私の興味はフィーのことだけなので、そういうのは無理ですね」
「面白い奴らだな。じゃあ、まあ、そろそろ始めるか。遠慮はいらない。二人同時でいい。思い切りかかってこい。エルフィードは」
「エルでいいです」
「俺のことはディー、と」
「わかった。エルは魔法も使え。ディー、エル、その実力を俺に示せ」

 店主さんがニヤリと笑ったのが、合図になった。


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