上 下
198 / 560
第4章 怪我をしたら更に溺愛されました。

38 唯一の半身

しおりを挟む



 クリスが俺を抱き上げる。
 特に会話もないまま、風呂場を出てベッドまで進む。
 …ドキドキが、強くなった。
 クリスはゆっくり俺をおろした。全身にあたるベッドのシーツが、妙に冷たく感じる。
 クリスはテーブルの上の果実水を口に含み、俺に口付けた。
 爽やかな香りの果実水が、流し込まれる。ちょっとずつ。お風呂で熱くなってた身体に、水分が染み込んでいく。
 何口目かの口移しを飲み込んだ後、唇は離れなかった。
 何度も角度を変えて、唇が触れる。
 口の中に入ってきた舌は、くすぐるように口内を舐め、優しく舌を絡め取る。

「ん………」

 いつもの奪われるようなキスも好きだけど、ゆっくりゆっくり、官能を引き出すようなこんなキスもいい。

 一度離れたとき、俺とクリスの口元が糸でつながった。それを見るだけで、身体中が熱くなる。

 クリスはテーブルの上のランタンを、ぎりぎりまで暗くした。
 真っ暗じゃないけど、本を読めるほど明るくもない。
 そんな暗さだけど、クリスの姿はしっかり見えるし、表情もわかる。

「アキ……愛してる」

 誓いのように左手の指先を持たれ、口付けられた。
 俺を見てくるクリスの瞳に熱を感じる。
 ちゅ…って指先に何度も唇を落として、徐に、ベッドサイドの棚から小瓶を取り出した。

「…なに、それ」
「主に初夜に使う香油だ。ほんの僅かに媚薬が含まれてる」
「び、やく」
「そんなに、強いものじゃない。痛みを少し和らげるくらいの効果しかないものだ。久しぶりだからな。…アキにつらい思いをさせたくないんだ。……使ってもいいか?」

 ……痛みを和らげるだけ……、って、いろんなフラグにしか思えない。俺が乱れまくる未来しか思い浮かばない。
 けど、『初夜』って。
 ……ああ、うん。そうだね。気分的にそんな、感じだ。

「……いいよ、使って」

 そういうの使わなくても、俺、最初から気持ちよくなってたから…、そういうものがあるんだってことも知らなかった…。

「つらかったり痛かったりしたら言うんだぞ?隠してもわかるからな?」
「わかるなら言わなくてもいいじゃん」

 ふふ…っと笑ってしまった。
 クリスも微笑んでくれる。

「クリス、愛してる……」
「俺もだ。アキ……アキラ、俺はお前だけを愛している。アキラの全て、俺のものだ。俺も、アキラだけのものだ」
「うん………うん」
「俺の……唯一の半身」

 もう一度、唇を重ねた。
 好き。大好き。愛してる。

 クリスがキスしたまま、俺の左手を持ち上げて、自分の首に回した。意図がわかって、回された左手を、右手でギュッと掴む。
 じわりと涙がにじむ。
 ほんと、どうしてわかってくれるんだろう。
 両腕で抱きつきたかった。しっかり、くっついていたかった。
 自分じゃどうしようもないことを、クリスが叶えてくれた。

「ん……んん……くりす、すき、すき…っ」

 クリスが右手で俺を抱きしめてくれる。背中に腕が入ったから、背筋が少し弓なりに反った。
 何か蓋を開ける音がして、花の香がした。
 それから、クリスの左手が俺の胸に触れてきたけど、その手は妙にヌルっとしていて、息を詰めた。
 多分、初夜用っていう香油なんだろうけど、そのヌルヌルした指で、優しく優しく乳首を撫でられて、頭の中がおかしくなりそうだった。

「はぁ……ぅん」
「気持ちいい?」
「ぅん……、いい……は、ぁぅ」

 右も左も優しくこねられる。つままれるときでさえ、もどかしくなるほどに優しい。左の胸をいじるときには、殊更優しさを増した。左肩から胸の先にかけて、何度も何度も撫でて、時々、心音を確認するようにピタリと止まる。
 それから、クリスが体をずらした。
 俺の腕の中から抜けて、左胸にキスを落とす。
 口に入れても問題のないものなのか、香油に濡れた乳首を、唇で挟むように愛撫してくる。

「んん……、やぁぅ…、ひぁ、ぁっ」

 食まれ、吸われて、舌先でちろちろ舐められる。
 ひどく丁寧に。
 ……ああ、でも、香油をなめたら、クリスにも媚薬成分が入っちゃうんじゃないのかな…。
 なんとなく目を開けて、クリスの方を見てしまった。途端、乳首を吸っていたクリスと目があって、顔が熱くなる。クリスは俺に見せつけるように舌を出し、舌先で乳首を甚振り始めた。

「あ……あ……っ、くりす、くりす…っ」

 視覚的にもやばい。
 は…っ、は…っ、て、短い呼吸を繰り返していたら、背中に回っていた手……は、ん、右と左、いつかわったんだっけ?頭の中が熱くて考えられなくて。多分、左胸をいじられたあたりから、右手と左手の役目が変わったんだと思うけど…。はっきり覚えていない。
 ただ、今は、左手が背中に当てられていて、その手がクリスの体ごと下に下に降りてきたことだけはわかった。

「アキ…足を」

 やんわりと太腿を押し広げられる。
 多分、俺の息子は十分反応してて、頭をもたげてるはず。そこに痛いほどの視線を感じて、さらに固くなった気がした。

 クリスの指が、太ももの内側をくすぐるようになでていく。……クリスの息遣いも荒くなってて、それが嬉しく感じる。
 ゆっくり俺の息子に触れてきた指先に、そこまで優しくなくてもいいのに…って、じれったい気持ちが生まれる。気持ちよすぎてどうにかなりそうなんだもん…。
 どうしよう…と、思っていたら、左手も体の下から抜かれた。それからすぐに、俺の息子の先に、冷たいような、熱いような、とろっとした液体がかけられた。

「あ……」

 多分、例の香油。
 鈴口をいじられながら、ぬるぬると竿をしごかれる。
 ……あ、それはだめ。気持ちよすぎる…!

「あっ、あぁぁ……っ、ぁんんっ」

 香油がたされた。
 それは当然のように流れ落ちて、尻のほうまで濡らしていく。

「痛かったら言うんだぞ?」

 クリスがそう言葉にして、香油に濡れた指を、窄まりの中に入れてきた。


しおりを挟む
感想 541

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

処理中です...