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上ばかりを狙う転生前
4 宮川篤紀の場合②
しおりを挟む混乱する頭で、俺は家路を急いだ。
今日は咲人の家で親の帰りを待ってる予定だったのに、自分の家に逃げ込んで、部屋に駆け込んでベッドに突っ伏した。
……好きな子って、どういうことだよ。なんで俺に何も言わないんだよ。
「…馬鹿だなぁ、俺」
咲人が好きだ。
あまりにも同じで、近すぎて、気づかなかった。
ずっと一緒で、これからも一緒だと思ってて、俺が優先するのは咲人で、咲人が優先するのは俺だと疑わなかった。
「……抱いたら俺のこと見てくれるのかな」
咲人の背中は綺麗。
一緒に風呂に入るときに見る咲人の体に、いつも欲情する。こっそりトイレで抜いたりもしてる。
でも、具体的に『抱く』ことをしってるわけじゃない。調べなきゃ駄目だ。なんとなく予想はついているけれど。
俺の頭の中が、『咲人の好きな人』から『咲人を抱くこと』に染まった頃、部屋のドアが開いた。
「ちょっと篤紀、なんでこっちにいるのさ。今日は僕のとこって言ってたでしょ」
「咲人」
布団から顔を出したら、咲人が少し困ったような起こったような顔をしてた。
「…どうしたの」
咲人はベッドに近づいてきて、俺の頬に手を当てる。こういうところ、すごく格好いいよな。
「なんでもない」
……やっぱり、好き、だなぁ。
「プリン買ってきたよ。食べるでしょ?」
「…食べる」
のそのそ起き上がったら、咲人はコンビニの袋の中からプリンを出して蓋を開ける。
「はい、篤紀。あーん」
小さなスプーンですくって俺の口元まで持ってくる。
嬉しくて好きで泣きそうになった。
そんな風に自分の気持ちってのを自覚して、セックスのやり方を調べまくって、抜くときは咲人に挿れることを思い浮かべながら、に、なった。
咲人は俺の気持ちなんて知らないから、朝勃ちしたペニスを平気で俺に擦りつけてくる。この間なんて寝ぼけてとかじゃなくて、俺のこと見ながら押し付けてきた。照れまくって風呂に追いやったけど、俺のもがっつり勃ってて、ためいきがでた。
咲人の好きな人が誰なのか知りたい。
けど、俺は咲人を失いたくない。誰にもやりたくない。
――――だから、決めた。
いつも通り、学校帰りに。
いつも通り、咲人の部屋に入って。
いつもと違う、どこか思い詰めたような咲人を真正面から見据えて。
思いを、伝えよう、って。
「「お前が好きだ!!」」
決意して覚悟して紡いだ言葉は、何故かハモった。
2人で「え?」って顔で見続けた。
……まあ、咲人も俺のことを『抱きたい』って思ってたことには驚いたけど、それでも嬉しかった。
だから、『じゃんけんで決めよう』って提案されたとき、嫌とは思わなかった。好きだし。できれば抱きたい。けど、じゃんけんで負けたら仕方ない。それでもきっと、今より近くなる。
好きって気持ちが高まって、手を繋いだのに。
……なのに。
***************
からだがいたい。
いしきがとぶ。
めのまえにさくとがいる。
てはにぎったまま。
さくと。
さくとがみえなくなる。
さくと。
さくと、こわい。
さくと。
さくと。
さくと
さくと
さくと
すきだよ
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