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上ばかりを狙う転生前

3 宮川篤紀の場合①

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 何から何まで一緒……なんてこと、ほんとないと思う。
 誕生日どころか、生まれた時間もほぼ一緒。隣同士だから、生まれた病院も一緒。
 これはなにかの縁だねーと、誕生日やクリスマス、盆暮れ正月……ほとんどの行事ごとも一緒に過ごしてた。
 俺にとって咲人と一緒に過ごすことは当然のことで、なんの疑問もないし、むしろ、傍に居ないと落ち着かないくらいの存在だった。

 小学生までは何の疑問も持たずに一緒のベッドで寝てた。
 中学に入ってからは、なんとなく照れくさくなった。…多分、仲良く夢精したあたりから。
 嫌じゃないし、一緒がいいから、泊まるときは同じベッドに入る。けど、あの日から、2人なんとなく背中合わせに寝るようになった。…少し寂しい。まあ、朝起きたら、お互い抱き合ってるようなカタチになってるから、寝てる間に無意識に寄り添ってるんだろうけど。
 でも、それも嫌じゃない。
 中学生男子が抱き合って嫌じゃない…って、これ、本当に普通のことなのか?俺達にとっては普通のことだからいいのか?

 変わり始めたのは3年になってから。
 咲人が朝勃ちしたペニスを、俺に押し付けてくるようになった。正直、ドキドキする。つられ勃ちしそうで歯を食いしばる。
 寝ぼけてるらしい咲人は、気持ちがいいのか、やらしい夢でも見てるのか、俺に勃起したペニスを押し付けて、腰まで揺らしてくる。

「っ」

 うっかり漏れそうになる声をなんとか押し留めて、すすっと体を離すと、すぐに咲人の手が俺を捕まえてしまう。ついでに尻の割れ目まで勃起したペニスでグリグリと刺激されて、心臓が跳ね上がる。
 尻をこすられてよがっちゃ駄目だろ、俺!
 なんとか咲人の魔の手から逃れて、全身で息をついた。
 咲人はむにむに言いながら、手をばたつかせて、俺を探してるっぽい。

「……人の気も知らないで」

 はぁ…、と思わず溜息をついて、咲人の寝顔をじっと見た。

「……夢の中で誰とシてんだよ」

 寝言で名前くらい呼べばわかるのに。
 ……わかったところで、応援なんてしないけど。

「……咲人」

 眠ったままの咲人の唇に、触れるだけのキスをした。
 俺はこんなに咲人の事が好きなのに。好きすぎて離れられないのに。
 咲人は誰のことが好きなんだろうか。





 数日前のこと。

 咲人はよく笑うし、人付き合いもうまい。
 一緒に兄弟のように育ってきたのに、俺なんかよりも余程愛想がいい。
 だから、女子も男子も、咲人の周りには人が絶えない。俺は、そんな中で笑う咲人の事をただ見てる。
 笑う顔は綺麗。
 普段も綺麗だけど。
 でも、咲人が一番綺麗な笑顔をみせてくれるのは、俺に向けてだけだ。

「篤紀」

 一番の笑顔。
 柔らかな手で俺の頭を撫でる。
 ……なんとも言えない視線が俺に向けられる。多分、嫉妬とか、羨望とか。俺は、それを感じながら優越感に浸っていた。

 放課後。
 特に部活に所属していない俺たちは、2人揃って下駄箱に立つ。

「あ」

 いつもなら2人でどちらかの家に帰る。今日は咲人の方かな。
 でも、何故か咲人は立ち止まったまま動こうとしない。

「咲人?」
「あー…、ごめんね、篤紀。先に帰ってくれる?」

 咲人の手元に、白い封筒があった。

「あ…」

 珍しいことじゃない。
 咲人がこういう類のものを無下にしないことも知ってる。

「……ん。わかった。先に帰っとくわ」
「ごめんね。プリン買って帰るから」
「高いやつな!」
「ふふ。りょーかい!」

 咲人が生徒玄関を出ていく。追いかけたい。行くなって叫びたい。…できないけど。

 それでも気になって、なんとなく後をつけてしまった。
 今回の相手はどんな子だろうか。
 気づかれないように注意しながら、息を殺して様子を見る。
 咲人が向かった先に、女子生徒が待っていた。…2年生だろうか。同学年で見たことない顔だ。
 こんな告白シーン、今まで何度も見た。
 咲人はいつも、『今はそういうことに興味ないから』とか、そんな断り方をする。それでも付き合ってみてほしいと食い下がる女子には、『無理だから。ごめんね』って、断るときも優しい。
 だから、今回も同じだと思ったのに。

「ごめんね。俺、好きな子がいるんだ。その子のことしか考えられないから、君のことを好きになることはないんだ」

 ……って言葉を聞いて、頭の中が真っ白になった。
 え。
 誰?
 好きな子ができたなんて、俺、初めて聞いた。


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