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俺は元自称婚約者な恋人に、とにかく甘えていたいらしい
30 大好きな人に触れられると、こんなに幸福な気持ちになるんだ
しおりを挟む…子供っぽいって馬鹿にされないかな。
無言の嘉貴にドキドキしていたら、頭をなでていた手が後ろ髪を弄って、そのまま下がって腰を抱かれた。
その動きでグラスの中のアイスティが揺れる。
「俺がいても眠れますか」
「うん」
「……その即答は少し傷つくけど……、それなら、ここにいようかな。…俺も浩希の傍にいたいから」
「嘉貴……」
「さ、まずは飲んでください。水分と栄養を取らないと、熱が下がりませんよ」
「あ、うん」
抱き寄せられているから、嘉貴の胸が近くにある。
嘉貴の鼓動を感じながらアイスティを飲みきると、氷が涼しげな音をたてた。
からになったグラスを嘉貴がひょいっと持ち上げて、トレイの上に戻す。動作に無駄がないっていうか……、一つ一つがすごく………格好良く見える。
「浩希」
嘉貴が腕に力を入れて俺の体をベッドに沈める。
それから与えられたキスは……甘くてレモンのいい匂いがした。
首に両腕をまきつけて、離れないように。
体に感じる嘉貴の重みは…本当に心地よくて。
「よしたか……」
何度も何度もキスを重ねながらパジャマの下に入り込んで素肌を探る手の意外なほどの冷たさに……、俺は両腕に力を込めていた。
大好きな人に触れられると、こんなに幸福な気持ちになるんだ。
「ん……ぁ、嘉貴……よしたか……」
頭の中にかかる霞は、熱のせいなんだろうか。それとも、嘉貴のせいなんだろうか。
最初冷たく感じた指先は、今はもう熱くて仕方がない。
「浩希」
耳元で名前を呼ばれるだけで、腰が跳ねあがって背中がゾクゾクする。
パジャマは捲られて、エアコンが効いてるせいでひんやりした部屋の空気を素肌に直接感じる。
「…愛してる…」
言葉とともに与えられる口付けは、酷く甘い。
「んふ………ぅ…」
好きでたまらない。
もっと強く抱き締めてほしい。
「よし……ぁ」
唇が離れることは許しては貰えず、入り込んできた舌があますところなく舐めていくのを感じているしかなかった。
全てを奪っていくような激しさに、体のあちこちに甘い疼きが生まれ始めていた。
嘉貴はそれを知ってか知らずか、臍のあたりをなでていた手を上に上に移動させてくる。
「ひぅ……ぁ……」
口付けられたまま、嘉貴の指が乳首を摘まんできた。
直接的な刺激に、背中が反り返る。
「ん……んん……」
痛みじゃない衝撃が走って、肩を震わせてしまった。
…昨日触れられたときより、なんだかもっと、感じてる気がする。
「…浩希…可愛い」
ようやく離れた口元は、そう言葉を紡いで微笑んでいた。
また、可愛いって。
どうしようもなく顔が赤くなっていくのを感じながら、目を閉じた。
嘉貴の唇を首筋に感じた。
それからふっと体が軽くなったかと思ったら、捲りあげられたパジャマは鎖骨のあたりまで肌蹴ていて、さっきまで弄られていた乳首に、ざらっとして湿った生温かいものを感じた。
「あ……っ」
舐められた……っていうことは、すぐにわかった。
「んぁ……ぁ……」
舌で転がされて、時々歯をたてられて、唇に吸われる。
もうどうしようもないくらいに頭の中はごちゃごちゃなのに、初めて知ったこの感触に意識が集中してしまった。
「気持ちいい?……こんなに硬くなった」
「あっ……んんっ、んー……い、ぃ」
硬くなった、っていうのは乳首のことなんだろうけど、気にしてる余裕がない。
片方を舐められて、片方を指先で弄られて、知らず知らず腰を嘉貴にすりよせていて。
「あ…はぁ……」
……こんな、恥ずかしい声だって。もう、止まらなくて。
「浩希……浩希…」
嘉貴が悪いんだ。
嘉貴が……そんな、熱くて甘い声で、俺のことを呼ぶから。
「嫌だったら蹴飛ばしてもいいから」
なんでそんなこと言うんだ……って思っていたら、嘉貴の手がパジャマのズボンの上から俺の下半身に触れてきた。
「ひぁ……っ」
自分でだってそんなにしたことがない。
なのに嘉貴の手はなんの躊躇いもなくそこを緩やかに刺激してくる。
「あ……あっ、あ」
強くもなく弱くもない力と、布が擦れる感じ。
触れられて、胸を弄られただけで勃ちかけてたことに気付かされた。
「はぁ……ぁんんっ」
口がふさがらない。
快感なんだ。
こうやって嘉貴にキスをされて触れられて。
それが全部……快感になる。
……嫌じゃない。蹴飛ばすなんて、考えられない。
目じりに涙がたまった。
「ん……よし……た、か………」
嘉貴の唇が胸から離れた。
それから、反応して硬くなりはじめてる俺のものからも手を離して………下着ごとズボンを脱がされた。
「っ」
思わず顔を手で覆っていた。
嘉貴の目の前に曝されている俺の体。
「………綺麗だ、浩希」
そう言うなり、足を大きく開かされた。
あまりのことに体が硬直してしまった。
視界を遮った分、自分の鼓動がやたらと耳につく。それから、嘉貴の視線を、痛いほど感じてしまう。
「浩希……」
目元を覆っていた腕を嘉貴に外された。
どうしたらいいかわからなくて、覆うかわりに目を硬く閉じる。
「最後まではしないから」
言葉の意味を深く考える余裕は俺にはなくて。
嘉貴の指が俺自身に絡みついて、形を確認するように辿る。
「あっ……」
その手はやんわりとそこを握って……上下に動き始めた。
「ああっ……」
俺は嘉貴に与えられる初めての快感に……ただ、身を委ねてしまっていた。
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