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第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と

47、今は子供な僕だけど

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身体から恐怖がひくと心に残ったのは後悔だった。

確かに人の命を簡単に奪うライモンド先生は怖い。
でも、それ以上にライモンド先生が消えてしまうのが怖かった。

だって、心地いいんだ。
ライモンド先生の匂いも、温もりも、あの手の感触も、声も全て、感じてるだけで幸せで、本当に居なくなってしまうなんて、あの時だって信じてなかった。信じたくなかった。


でも、目を開ければ、やっぱり、ライモンド先生は現実でも夢の中でも居なくて、スンッと鼻を鳴らした。

「すんっ…。違うもんっ。悲しくないもんっ! 泣き寝入りは無しなんだもんっ!!」

これは涙ではなく、心の汗だと熱血一直線な言い訳をして、ぴょんっと起きる。
洗面台にめいいっぱい冷えっ冷えの水を溜め、水の中で「我々は宇宙人っ!」と自分でも言ってて謎な事を叫ぶ。


時刻は昼過ぎ。
でも、僕は今起きたので、「おはよう」と侍女さん達に声を掛けると、ちょっと涙ぐみながら頭を撫で繰り回された。
ごめんよ。ご迷惑お掛けしまして。

まだ寝てた方がいい。ゆっくりして欲しい。と、至れり尽くせり、甘やかしお菓子セット膝枕付きを侍女さん達が用意してくれたが、僕は丁重に謹んでお断り申した。

僕は転んでもタダじゃ起きない男なんだ。
泣き寝入りしない男なので、甘やかしはなしの方向でと、お菓子をひとつ摘んでお断りした。


髪を整えてもらって、制服を着て、向かう目的の先はひとつ。


「たのもーーっ!!」

スパンッと勢いよく談話室の扉を開ける。
すると、部屋の中でグルグル眼鏡先輩が待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑っていた。

「わたくしの言った事は真実だったでしょう?」

「うん。そうだね。全くその通りだったよ」

「………ず、随分と、あっけらかんとしてるじゃないですか」

グルグル眼鏡先輩は僕を見て、切なげにテーブルに所狭しと並ぶお菓子を見た。
どうやら落ち込んだ僕を励ます為にお菓子を用意してくれたらしい。

「ごほんっ。……ライモンド・クェーバは学園から去った。つまり、ラニ氏はライモンド・クェーバと決別……」

「僕。ライモンド先生の事何も知らなかったんだね。だから次に会える時までにもっと大人になってるんだ!」

「つ、次??」

「だって、物語は終わってないんでしょ? ライモンド先生の役割もまだ終わってない。なら、今度はあんな顔させない。ジョークのひとつでもかましてみせるよ」

「そういう…、そういう問題ですか?」

納得いかなそうに口元をひくひくさせるグルグル眼鏡先輩。

うん。普通はこのままサヨナラだよね。でも、僕、何も知らないままサヨナラは嫌だよ。


「レヴァ伯父さんの事だってそう。僕がまだ子供だからファルハの王との間に何があったのか教えてもらえない。僕がもっとしっかりして、受け止められるようになるんだ。ライモンド先生に頼ってもらえる大人になるんだ」

今はまだ何も出来ない子供で、ただ震えてる事しか出来なくても、きっと僕自身が大人になれば、きっと……。


「ラニ氏は…、本当にライモンド先生が好きなのですね」

「うん。大好きだよ?」

「……いや、そういう意味では」

「分かってるよ。だから、大人になりたいんだ」

「ノンケだった癖に随分と情熱的ですね」

「南国育ちだからね」


逃げられたのなら追えばいい。
後悔したのなら、次は後悔しないようにすればいい。




レーヴ帝国に留学して1年と数ヶ月。
ラニ。14歳の秋。

お国の大王じいちゃん第一王子伯父さん、それから大好きな両親へ。

まだまだ僕は国には帰れません。
ロバ耳は未だ原因不明だし、好きな人に逃げられました。

ちょっと、取っ捕まえて、話し合わなければいけないので当分帰れませんので、あしからず!!
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