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第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と
40、夢と現実は違うんだ…
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「全くっ! 2人して酷すぎる。イジメだ」
紅葉狩りから帰ってもまだ2人の所業に怒りがおさまらず、ロバ耳も怒りでピンッとしてる。
プンプンと怒りながらシルビオからもらった赤い葉を分厚い本に挟み、『簡単!押し花の栞の作り方』という本を図書館の本棚から取り出す。
シルビオが機嫌取りに…、
『この紅葉。オニーサンが栞にしてあげよっか? あっ、ラニラニ、頭に紅葉付いてるよ。俺の分もこの紅葉で栞作ってお揃いにする?』
…なんて、言ってたけど、笑止っ!
お揃いは魅力的だけど。
友達との思い出の品って感じでとぉーっても魅力的だけど、僕は怒ってるんだ。
『いいもんっ! 自分で作るもんッ』
『そっか…。それはザンネン。ぢゃあ、俺は俺の分を自分で作るよ』
『それ。結局は、お揃いになってるじゃないですか』
『シッ! …リュビちゃんお口にチャック』
僕は怒ってる。
だから、シルビオの思い通りにはならないんだとフンスッと自信満々にシルビオの提案を断った。
シルビオは少し、しゅんっとしてちょっと可哀想だとは思ったけど、僕は怒ってる。
栞の作り方知らないけど、シルビオの申し出を断って調べて作る程、怒ってる。
『ぢゃあ。俺は図書館の中庭で鍛錬してるから、ゆっくり調べて』と、シルビオは僕を置いて出て行ったが、知らない。僕は怒ってるんだ。
「閨の授業もシルビオの手解きも要らないもんっ。僕はもう14歳なんだ!」
僕は自分の事は自分で出来る。
何でもかんでもやってもらう子供じゃない。
精通だって、初めてだったから混乱してオネショと間違えただけ。
ひとりで国から留学するくらいには大人なんだ。
「大体っ! リュビオは僕をなんだと思ってるの!? 僕はエロい夢なんて見てなっ…」
怒りのままに本を持って席につき、小声で叫ぶ。
だが、リュビオの意見をぶった斬ろうとしだ瞬間、あの夢を思い出して、怒りが途端に困惑に変わる。
夢の中で香るラベンダーの香り。
触れる手の感触は擽ったく、熱を孕んだ夕陽色の瞳は僕にまで熱を移してくる。
柔らかい桜色の唇は触れる度に深く重なり、その器用な舌に僕の舌を絡め取られて、頭がふわふわする。
ライモンド先生とのそんなありえない夢。
ー うん…。それだね…
確実にあの夢が原因だと自身でも呆れる。
しかも、1ヶ月前から夢のライモンド先生は僕にキスしてない。
怪我が治ってきてからは夢のライモンド先生は怪我に触れ、そして少し寂しそうに唇を指でなぞるだけで何もしてない。
それがなんだかもどかし……。
いや、なんでもない。
「最低だ…。最低すぎるよ、僕っ」
ガンッと額をぶつける勢いでテーブルに伏せる。
穴があったら大声で叫びたい程、自身が恥ずかしすぎる。
そもそも何故ライモンド先生なのか?
僕は至ってノーマルな筈だ。
だって、両親みたいな夫婦に憧れはあるし。初めてはお嫁さんとと決めてるから。
でも、そっと唇に触れると、夢のライモンド先生の唇の感触が甦り、風邪でも引いたかのようにブワリッと熱が上がって…。
「何、百面相してるのですか? ラニ氏」
突如、声を掛けられ、思わず赤い顔のまま、振り返る。
そこにはグルグル眼鏡先輩がいて、「メ、メスの顔…」と不穏な事を呟いた。
「ま、まさか。もう処女じゃない!? 誰ですかっ! 誰を寝取ったのですかッ。ジェルマンですか? それともシルビオ? …まさか、エレン」
「しょ? は? 何その不穏な単語の羅列は!?」
なんだかとっても恐ろしい事を血走った目で口走られ、あまりに不本意で、ガタッと立ち上がって抗議する。
しかも、何故か一番有り得ないシルビオがちゃっかり候補に入ってる。
「シルビオは僕を手の掛かる子供だと思ってるんだよ?」と諭せば、「これだからお子ちゃまは」とすっごい盛大に溜息つかれた。
「異議ありっ!」
「さて、お久しぶりです。ラニ氏」
「む、無視…。うん、まぁ、とってもお久しぶりだけど」
僕の異議をサラッと心の中のゴミ箱に投げ捨てたグルグル眼鏡先輩はぺこりっと頭を下げた。だから、僕も頭を下げ返した。
「本当に久々だね。合宿前ぶり?」
「そうです。お陰様で合宿ぶりです。本当に全くっ!」
イリイリと途端に怒り始めたグルグル眼鏡先輩。
だが、チラリと窓の外を見て、バッとテーブルの下に素早く隠れる。
何事かとグルグル眼鏡先輩が見ていた窓の外を見ると剣の鍛錬しているシルビオと目があった。
陽光でキラキラと煌めく汗を拭きながら、こちらににこりっと微笑むので、笑い返すと、苦笑された。
あ、そうだ。僕、シルビオに怒ってるんだったよ。プイッ。
「アレの所為ですよ。気付くのです、ラニ氏。アレです。アレ」
テーブルの下に隠れたままで出てこないグルグル眼鏡先輩は冷や汗を掻く。
あんなに最初はお気に入りだったキャラをついにはアレ呼ばわりだ。
どうやら、空想と現実は違うらしい。世知辛い。
紅葉狩りから帰ってもまだ2人の所業に怒りがおさまらず、ロバ耳も怒りでピンッとしてる。
プンプンと怒りながらシルビオからもらった赤い葉を分厚い本に挟み、『簡単!押し花の栞の作り方』という本を図書館の本棚から取り出す。
シルビオが機嫌取りに…、
『この紅葉。オニーサンが栞にしてあげよっか? あっ、ラニラニ、頭に紅葉付いてるよ。俺の分もこの紅葉で栞作ってお揃いにする?』
…なんて、言ってたけど、笑止っ!
お揃いは魅力的だけど。
友達との思い出の品って感じでとぉーっても魅力的だけど、僕は怒ってるんだ。
『いいもんっ! 自分で作るもんッ』
『そっか…。それはザンネン。ぢゃあ、俺は俺の分を自分で作るよ』
『それ。結局は、お揃いになってるじゃないですか』
『シッ! …リュビちゃんお口にチャック』
僕は怒ってる。
だから、シルビオの思い通りにはならないんだとフンスッと自信満々にシルビオの提案を断った。
シルビオは少し、しゅんっとしてちょっと可哀想だとは思ったけど、僕は怒ってる。
栞の作り方知らないけど、シルビオの申し出を断って調べて作る程、怒ってる。
『ぢゃあ。俺は図書館の中庭で鍛錬してるから、ゆっくり調べて』と、シルビオは僕を置いて出て行ったが、知らない。僕は怒ってるんだ。
「閨の授業もシルビオの手解きも要らないもんっ。僕はもう14歳なんだ!」
僕は自分の事は自分で出来る。
何でもかんでもやってもらう子供じゃない。
精通だって、初めてだったから混乱してオネショと間違えただけ。
ひとりで国から留学するくらいには大人なんだ。
「大体っ! リュビオは僕をなんだと思ってるの!? 僕はエロい夢なんて見てなっ…」
怒りのままに本を持って席につき、小声で叫ぶ。
だが、リュビオの意見をぶった斬ろうとしだ瞬間、あの夢を思い出して、怒りが途端に困惑に変わる。
夢の中で香るラベンダーの香り。
触れる手の感触は擽ったく、熱を孕んだ夕陽色の瞳は僕にまで熱を移してくる。
柔らかい桜色の唇は触れる度に深く重なり、その器用な舌に僕の舌を絡め取られて、頭がふわふわする。
ライモンド先生とのそんなありえない夢。
ー うん…。それだね…
確実にあの夢が原因だと自身でも呆れる。
しかも、1ヶ月前から夢のライモンド先生は僕にキスしてない。
怪我が治ってきてからは夢のライモンド先生は怪我に触れ、そして少し寂しそうに唇を指でなぞるだけで何もしてない。
それがなんだかもどかし……。
いや、なんでもない。
「最低だ…。最低すぎるよ、僕っ」
ガンッと額をぶつける勢いでテーブルに伏せる。
穴があったら大声で叫びたい程、自身が恥ずかしすぎる。
そもそも何故ライモンド先生なのか?
僕は至ってノーマルな筈だ。
だって、両親みたいな夫婦に憧れはあるし。初めてはお嫁さんとと決めてるから。
でも、そっと唇に触れると、夢のライモンド先生の唇の感触が甦り、風邪でも引いたかのようにブワリッと熱が上がって…。
「何、百面相してるのですか? ラニ氏」
突如、声を掛けられ、思わず赤い顔のまま、振り返る。
そこにはグルグル眼鏡先輩がいて、「メ、メスの顔…」と不穏な事を呟いた。
「ま、まさか。もう処女じゃない!? 誰ですかっ! 誰を寝取ったのですかッ。ジェルマンですか? それともシルビオ? …まさか、エレン」
「しょ? は? 何その不穏な単語の羅列は!?」
なんだかとっても恐ろしい事を血走った目で口走られ、あまりに不本意で、ガタッと立ち上がって抗議する。
しかも、何故か一番有り得ないシルビオがちゃっかり候補に入ってる。
「シルビオは僕を手の掛かる子供だと思ってるんだよ?」と諭せば、「これだからお子ちゃまは」とすっごい盛大に溜息つかれた。
「異議ありっ!」
「さて、お久しぶりです。ラニ氏」
「む、無視…。うん、まぁ、とってもお久しぶりだけど」
僕の異議をサラッと心の中のゴミ箱に投げ捨てたグルグル眼鏡先輩はぺこりっと頭を下げた。だから、僕も頭を下げ返した。
「本当に久々だね。合宿前ぶり?」
「そうです。お陰様で合宿ぶりです。本当に全くっ!」
イリイリと途端に怒り始めたグルグル眼鏡先輩。
だが、チラリと窓の外を見て、バッとテーブルの下に素早く隠れる。
何事かとグルグル眼鏡先輩が見ていた窓の外を見ると剣の鍛錬しているシルビオと目があった。
陽光でキラキラと煌めく汗を拭きながら、こちらににこりっと微笑むので、笑い返すと、苦笑された。
あ、そうだ。僕、シルビオに怒ってるんだったよ。プイッ。
「アレの所為ですよ。気付くのです、ラニ氏。アレです。アレ」
テーブルの下に隠れたままで出てこないグルグル眼鏡先輩は冷や汗を掻く。
あんなに最初はお気に入りだったキャラをついにはアレ呼ばわりだ。
どうやら、空想と現実は違うらしい。世知辛い。
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