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第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と

22、今夜はオールナイト

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「……で、昨日からルトゥフ王子と行動を共にしているって事かなー」

「…そうなるね」


お昼の時間。

突如、エリオットが課外授業から帰ってきたシルビオに攫われたと思ったら死んだ顔を浮かべたエリオットとともに帰ってきた。

そしてそのまま僕も捕まって、ニッコリと表情の読めない笑顔を浮かべて、詰問するシルビオに戦慄しながらありのままを答えたら、シルビオの顔が渋い顔になった。

「ラニラニ。ラニラニは一度、ファルハ人に拐われ掛けたんだよ? 自覚を持って行動するべきかな。…エリオット・ルー、お前もだ」

そのまま食堂の席につき、僕は先に待っていた皇子とシルビオの間に、エリオットはシルビオの前に座らさせられていた。

ついでにエレンはレーヴ帝国北方の領にあるオペラ会場の見学で別行動。

リュビオは…。リュビオは地獄と称した婚約者の待つホテルへとあのまま連れて行かれてしまった…。


「シルビオ。でも、ルトゥフが僕を拐おうとしたんじゃないよ。ルトゥフはルトゥフだよ」

「その君を拐おうとした奴隷を輩出しているのがファルハ国で、彼はその王子なんだよ、ラニラニ」

真面目で騎士の仕事に忠実なシルビオはもしもの事を考えて、きっと、僕を拐おうとしたファルハ人の王子と仲良くする僕達が浅はかだと怒ってる。

皇子もそうなのかなと皇子を見やると皇子はケニー達と打ち解けつつあるルトゥフを見て、何処かホッとした表情を浮かべていた。

「フィルっち?」

「……少しくらいなら構わないのではないか?」

「ほらっ。フィルバート殿下だってそう仰ってるじゃないっすか。そもそも干渉が過ぎるんすよ。ラニだってラニの交友関係ってもんがある」

意外な皇子の言葉にシルビオは目を見開いていたが、すぐにここぞとばかりに皇子の言葉に乗っかるエリオットに直様呆れ顔に変わった。

しかし、エリオットは挫けない。
ここぞとばかりにあの恐ろしいシルビオに畏れという感情を知らないのか提案する。

「そうっ! ラニの交友関係だって護衛として尊重するべきなんすよ。束縛彼氏じゃないんだから常日頃からラニを連れ回しすぎなんすよ、殿下達は」

感情の読めない笑みでエリオットに向けるシルビオを前にエリオットが生き急ぐ。
まさかの皇子一番のシルビオを前に皇子批判。

皇子は皇子で騎士でしかも自身より年下のエリオットに何故か説教されている事実を受け入れられないようで呆然とした顔でエリオットを見てる。

「だからこそ、俺はここに提案します。今日の肝試しが終わったワクワクな夜の時間は歳上なお兄さん達に邪魔されずに同い年同士の青春を謳歌したい。俺はラニの部屋でオールナイト男子会を開く!」

「オールナイト男子会?」

『オールナイト男子会』。
その魅惑的な楽しそうな言葉に心がときめく。
『夜の時間』という単語も大人っぽくて魅力的で、同い年同士が集まって何かするって時点でもう面白い。

とても面白そうで、思わずピョンっと立ち上がる。
隣の皇子に行儀が悪いと言われたが、しょうがない。
だって、楽しそうなんだもん。

「何するの? みんなで部屋で集まって寝ずに何するの? トランプ大会? すごろく??」

「ふっ、ふっ、ふー。甘いな、ラニ。俺達はもう14歳なんだぜ? 思春期の男子がやるこたーひとつだ」

エリオットは得意げに懐から一冊の薄い冊子を取り出した。
その瞬間、皇子は食べようとした食事を喉に詰まらせながら狼狽え、シルビオは今まで見た事もない侮蔑の目でエリオットを見た。

僕は期待に胸を躍らせて冊子の表紙を見たが、その表紙に描かれていたのはほぼ裸のむちむちボディのお姉さんだった。

「あー、春画だ」

「これは俺の先輩達から特別に譲ってもらった紳士の嗜み。ケニーとルトゥフも呼んでみんなで見よーぜ!」

「はいっ! はいっ! 隊長!! 僕もなんか用意した方がいい? 読書の友のお菓子?」

「菓子はまた次の機会にして出来れば、肌に優しい紙をあるだけ用意してほしいな、ラニ隊員! ……今夜は寝ないぜ、ハニー。オールナイトだ」

「徹夜は響くから、せめて1時間は寝かせてほしいと先に伝えとくよ! ダーリン」

「待てっ!? 却下だ。ラニにはまだ早い!!」

「なんでさ!?」

「早いよ、ラニラニには」

大人の男の第一歩。
《紳士の嗜み》を神々と掲げるエリオット。
初めて生で見るその《紳士の嗜み》を掲げるエリオットは自身よりも何処か大人に見えた。

しかし、皇子達は僕達が大人の男への一歩を踏み出す事に反対で止めに掛かる。それを華麗に交わしてエリオットは僕に持って逃げるように渡そうとした。

だが、僕の手に渡る前に上から伸びてきた誰かの手に呆気なく、奪われた。
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