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第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と

10、お茶会は闇の世界。じゃあ、夜会は?

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リュビオがシルビオに意識を刈り取られ、連れて行かれてしまった。

「ふぅ…。相変わらず、諦めが悪い」

「ひぇ…」

「ラニラニ。えっとね…。そうあからさま距離を取られると流石にオニーサン傷付くよ」

「僕、僕っ!逃げずに大人しくここにいるよ!!」

「逃げる気だったの? …って、追求したい所だけど、これ以上距離を置かれるのは流石に悲しいからやめとくよ。ほら、ラニラニ、お菓子あげるから許して…ね?」

もしかしたらシルビオは騎士は面の顔で裏では暗殺者なのかもしれない。
危ない男設定とか攻略キャラなら有り得そうだと1人で納得して、精神的にも物理的にも距離を取る。

だけどシルビオは美味しそうなお菓子を持って、いとも簡単にストンと隣に座る。

なんか高そうなチョコを片手にさりげなく肩を抱くシルビオの甘く振る舞う姿が僕には怖い。裏をとても感じる。

君は僕をどうしたいのかな!?


「俺、もっとラニラニと仲良くしたいなー」

「あっはっは……、充分じゃないかな…」

「そー? でも、ラニラニって、俺の事警戒してるよね? それが寂しいかなー」

「ソンナ事ナイナッテ」

ただ怖いだけですとは、本人に向かって流石に言えない。

取り敢えず、怖くてもその高そうなチョコは欲しいので頂戴と手を出す。
何かチョコと交換条件でも出されるのかな?と思ったが、案外すんなりチョコをくれた。

口に入れた瞬間、ふわりと溶けて消えたチョコに驚き、その美味しさにうずうずしてチラリとシルビオを見る。
苦笑を浮かべて、「じゃー、ひとつ」と摘み、食べるシルビオに満足してもう一つ頬張るが…。

「ついでにそのお菓子には媚薬が入ってるんだよねー」

「ゴホッ。ゴホゴホゴホっ!!?」

シルビオの口から不穏な単語が聞こえて、盛大に咽せた。

ゴホゴホッと咽せたついでにチョコを吐き出そうとする僕の背を撫でる。吐き出そうとしてるのに、どうぞ、と僕の口に紅茶を注ぐ。何考えてんの!?

「ジョーダンだよ。ジョーダン」

「……ごほっ、うぅ。もういらない」

「ごめんごめん。……ラニラニって箱入りっぽいからそーゆう知識ってあるのかなーって、急に気になっちゃって」

だから飲み込んでも大丈夫と笑顔で僕を介抱するシルビオを僕の全身全霊を持って睨み付ける。

「箱入りはそもそも一人で遠くの国に留学しないよ」

「そうだねー。でも、ラニラニはそーゆう経験ある?」

「僕だって何時かは可愛いお嫁さんといっぱいチューするんだよ」

「成程。ファーストキスもまだ……ね」

「うぅ…。僕、やっぱり、学園に帰るぅ!」

全身全霊の睨みもさらっと交わされ、更にさらりっとファーストキスもまだな事を言い当てられて、僕のささやかなプライドをズタズタにしてくる。

「あははっ。ごめんごめん。代わりにオニーサンが上手なキスの仕方を教えてあげよっかー?」

「お断り申すよっ!」

「そっかー。それは残念」

肘をテーブルにつき、余裕な大人の顔で僕をいじりながらシルビオはメイドさんから淹れてもらったコーヒーを飲む。

砂糖もミルクもなしのブラックをグイッと飲み干すシルビオに悔しいけど、ちょっと尊敬してしまう。
僕もいつか飲めるようになるんだ。

手始めに紅茶にお砂糖3つにミルクをたっぷり入れたい所を我慢してストレートで頂く。
うん。ちょっと渋い。


ふわりとまだカップに残るお茶から湯気が上がる。
温かな温室で飲む温かな紅茶の余韻に微睡み、思わず欠伸をかく。

温室のガラス天井から見える空は夕暮れ色に染まっている。
もうすぐ夜かとぼんやりと眺めていると、シルビオがストールを僕の肩に羽織らせた。


「ラニラニ。そろそろ寒くなってくるからお部屋で休んだ方がいいよ。夜会が終わったらフィルっちと一緒に見に来るからね」

「や…、だから、逃げないよ、怖いから。……ん? あれ、ちょっと待って!? リュビオは? 一緒に出るのにリュビオは一緒じゃないの?!」

「リュビちゃんは先客がいるから無理かなー。さっきも血眼で探してたし」

じゃ、行ってくるね、と爽やかに手を振り、夜会へと出掛けていったシルビオ。
そんなシルビオの後ろ姿を見送りながら僕は残った紅茶に砂糖を2個入れて、震える手で流し込んだ。

「帰れないんだ…。リュビオ、夜会から帰れないんだっ…」

夜会は魔窟か何かか。
リュビオを血眼で探している先客あの人にシルビオが生贄としてリュビオを差し出す光景が浮かび、震え上がる。

絶対、夜会には参加しないと僕はこの日、グッと胸に誓う……が。

この一年後に抵抗虚しく、魔窟夜会にブッ込まれる事をこの時の僕はまだ知らない。
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