41 / 119
第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と
10、お茶会は闇の世界。じゃあ、夜会は?
しおりを挟む
リュビオがシルビオに意識を刈り取られ、連れて行かれてしまった。
「ふぅ…。相変わらず、諦めが悪い」
「ひぇ…」
「ラニラニ。えっとね…。そうあからさま距離を取られると流石にオニーサン傷付くよ」
「僕、僕っ!逃げずに大人しくここにいるよ!!」
「逃げる気だったの? …って、追求したい所だけど、これ以上距離を置かれるのは流石に悲しいからやめとくよ。ほら、ラニラニ、お菓子あげるから許して…ね?」
もしかしたらシルビオは騎士は面の顔で裏では暗殺者なのかもしれない。
危ない男設定とか攻略キャラなら有り得そうだと1人で納得して、精神的にも物理的にも距離を取る。
だけどシルビオは美味しそうなお菓子を持って、いとも簡単にストンと隣に座る。
なんか高そうなチョコを片手にさりげなく肩を抱くシルビオの甘く振る舞う姿が僕には怖い。裏をとても感じる。
君は僕をどうしたいのかな!?
「俺、もっとラニラニと仲良くしたいなー」
「あっはっは……、充分じゃないかな…」
「そー? でも、ラニラニって、俺の事警戒してるよね? それが寂しいかなー」
「ソンナ事ナイナッテ」
ただ怖いだけですとは、本人に向かって流石に言えない。
取り敢えず、怖くてもその高そうなチョコは欲しいので頂戴と手を出す。
何かチョコと交換条件でも出されるのかな?と思ったが、案外すんなりチョコをくれた。
口に入れた瞬間、ふわりと溶けて消えたチョコに驚き、その美味しさにうずうずしてチラリとシルビオを見る。
苦笑を浮かべて、「じゃー、ひとつ」と摘み、食べるシルビオに満足してもう一つ頬張るが…。
「ついでにそのお菓子には媚薬が入ってるんだよねー」
「ゴホッ。ゴホゴホゴホっ!!?」
シルビオの口から不穏な単語が聞こえて、盛大に咽せた。
ゴホゴホッと咽せたついでにチョコを吐き出そうとする僕の背を撫でる。吐き出そうとしてるのに、どうぞ、と僕の口に紅茶を注ぐ。何考えてんの!?
「ジョーダンだよ。ジョーダン」
「……ごほっ、うぅ。もういらない」
「ごめんごめん。……ラニラニって箱入りっぽいからそーゆう知識ってあるのかなーって、急に気になっちゃって」
だから飲み込んでも大丈夫と笑顔で僕を介抱するシルビオを僕の全身全霊を持って睨み付ける。
「箱入りはそもそも一人で遠くの国に留学しないよ」
「そうだねー。でも、ラニラニはそーゆう経験ある?」
「僕だって何時かは可愛いお嫁さんといっぱいチューするんだよ」
「成程。ファーストキスもまだ……ね」
「うぅ…。僕、やっぱり、学園に帰るぅ!」
全身全霊の睨みもさらっと交わされ、更にさらりっとファーストキスもまだな事を言い当てられて、僕のささやかなプライドをズタズタにしてくる。
「あははっ。ごめんごめん。代わりにオニーサンが上手なキスの仕方を教えてあげよっかー?」
「お断り申すよっ!」
「そっかー。それは残念」
肘をテーブルにつき、余裕な大人の顔で僕をいじりながらシルビオはメイドさんから淹れてもらったコーヒーを飲む。
砂糖もミルクもなしのブラックをグイッと飲み干すシルビオに悔しいけど、ちょっと尊敬してしまう。
僕もいつか飲めるようになるんだ。
手始めに紅茶にお砂糖3つにミルクをたっぷり入れたい所を我慢してストレートで頂く。
うん。ちょっと渋い。
ふわりとまだカップに残るお茶から湯気が上がる。
温かな温室で飲む温かな紅茶の余韻に微睡み、思わず欠伸をかく。
温室のガラス天井から見える空は夕暮れ色に染まっている。
もうすぐ夜かとぼんやりと眺めていると、シルビオがストールを僕の肩に羽織らせた。
「ラニラニ。そろそろ寒くなってくるからお部屋で休んだ方がいいよ。夜会が終わったらフィルっちと一緒に見に来るからね」
「や…、だから、逃げないよ、怖いから。……ん? あれ、ちょっと待って!? リュビオは? 一緒に出るのにリュビオは一緒じゃないの?!」
「リュビちゃんは先客がいるから無理かなー。さっきも血眼で探してたし」
じゃ、行ってくるね、と爽やかに手を振り、夜会へと出掛けていったシルビオ。
そんなシルビオの後ろ姿を見送りながら僕は残った紅茶に砂糖を2個入れて、震える手で流し込んだ。
「帰れないんだ…。リュビオ、夜会から帰れないんだっ…」
夜会は魔窟か何かか。
リュビオを血眼で探している先客にシルビオが生贄としてリュビオを差し出す光景が浮かび、震え上がる。
絶対、夜会には参加しないと僕はこの日、グッと胸に誓う……が。
この一年後に抵抗虚しく、魔窟にブッ込まれる事をこの時の僕はまだ知らない。
「ふぅ…。相変わらず、諦めが悪い」
「ひぇ…」
「ラニラニ。えっとね…。そうあからさま距離を取られると流石にオニーサン傷付くよ」
「僕、僕っ!逃げずに大人しくここにいるよ!!」
「逃げる気だったの? …って、追求したい所だけど、これ以上距離を置かれるのは流石に悲しいからやめとくよ。ほら、ラニラニ、お菓子あげるから許して…ね?」
もしかしたらシルビオは騎士は面の顔で裏では暗殺者なのかもしれない。
危ない男設定とか攻略キャラなら有り得そうだと1人で納得して、精神的にも物理的にも距離を取る。
だけどシルビオは美味しそうなお菓子を持って、いとも簡単にストンと隣に座る。
なんか高そうなチョコを片手にさりげなく肩を抱くシルビオの甘く振る舞う姿が僕には怖い。裏をとても感じる。
君は僕をどうしたいのかな!?
「俺、もっとラニラニと仲良くしたいなー」
「あっはっは……、充分じゃないかな…」
「そー? でも、ラニラニって、俺の事警戒してるよね? それが寂しいかなー」
「ソンナ事ナイナッテ」
ただ怖いだけですとは、本人に向かって流石に言えない。
取り敢えず、怖くてもその高そうなチョコは欲しいので頂戴と手を出す。
何かチョコと交換条件でも出されるのかな?と思ったが、案外すんなりチョコをくれた。
口に入れた瞬間、ふわりと溶けて消えたチョコに驚き、その美味しさにうずうずしてチラリとシルビオを見る。
苦笑を浮かべて、「じゃー、ひとつ」と摘み、食べるシルビオに満足してもう一つ頬張るが…。
「ついでにそのお菓子には媚薬が入ってるんだよねー」
「ゴホッ。ゴホゴホゴホっ!!?」
シルビオの口から不穏な単語が聞こえて、盛大に咽せた。
ゴホゴホッと咽せたついでにチョコを吐き出そうとする僕の背を撫でる。吐き出そうとしてるのに、どうぞ、と僕の口に紅茶を注ぐ。何考えてんの!?
「ジョーダンだよ。ジョーダン」
「……ごほっ、うぅ。もういらない」
「ごめんごめん。……ラニラニって箱入りっぽいからそーゆう知識ってあるのかなーって、急に気になっちゃって」
だから飲み込んでも大丈夫と笑顔で僕を介抱するシルビオを僕の全身全霊を持って睨み付ける。
「箱入りはそもそも一人で遠くの国に留学しないよ」
「そうだねー。でも、ラニラニはそーゆう経験ある?」
「僕だって何時かは可愛いお嫁さんといっぱいチューするんだよ」
「成程。ファーストキスもまだ……ね」
「うぅ…。僕、やっぱり、学園に帰るぅ!」
全身全霊の睨みもさらっと交わされ、更にさらりっとファーストキスもまだな事を言い当てられて、僕のささやかなプライドをズタズタにしてくる。
「あははっ。ごめんごめん。代わりにオニーサンが上手なキスの仕方を教えてあげよっかー?」
「お断り申すよっ!」
「そっかー。それは残念」
肘をテーブルにつき、余裕な大人の顔で僕をいじりながらシルビオはメイドさんから淹れてもらったコーヒーを飲む。
砂糖もミルクもなしのブラックをグイッと飲み干すシルビオに悔しいけど、ちょっと尊敬してしまう。
僕もいつか飲めるようになるんだ。
手始めに紅茶にお砂糖3つにミルクをたっぷり入れたい所を我慢してストレートで頂く。
うん。ちょっと渋い。
ふわりとまだカップに残るお茶から湯気が上がる。
温かな温室で飲む温かな紅茶の余韻に微睡み、思わず欠伸をかく。
温室のガラス天井から見える空は夕暮れ色に染まっている。
もうすぐ夜かとぼんやりと眺めていると、シルビオがストールを僕の肩に羽織らせた。
「ラニラニ。そろそろ寒くなってくるからお部屋で休んだ方がいいよ。夜会が終わったらフィルっちと一緒に見に来るからね」
「や…、だから、逃げないよ、怖いから。……ん? あれ、ちょっと待って!? リュビオは? 一緒に出るのにリュビオは一緒じゃないの?!」
「リュビちゃんは先客がいるから無理かなー。さっきも血眼で探してたし」
じゃ、行ってくるね、と爽やかに手を振り、夜会へと出掛けていったシルビオ。
そんなシルビオの後ろ姿を見送りながら僕は残った紅茶に砂糖を2個入れて、震える手で流し込んだ。
「帰れないんだ…。リュビオ、夜会から帰れないんだっ…」
夜会は魔窟か何かか。
リュビオを血眼で探している先客にシルビオが生贄としてリュビオを差し出す光景が浮かび、震え上がる。
絶対、夜会には参加しないと僕はこの日、グッと胸に誓う……が。
この一年後に抵抗虚しく、魔窟にブッ込まれる事をこの時の僕はまだ知らない。
11
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
くんか、くんか Sweet ~甘くて堪らない、君のフェロモン~
天埜鳩愛
BL
爽やかスポーツマンα × 妄想巣作りのキュートΩ☆ お互いのフェロモンをくんかくんかして「甘い❤」ってとろんっとする、可愛い二人のもだきゅんラブコメ王道オメガバースです。
オメガ性を持つ大学生の青葉はアルバイト先のアイスクリームショップの向かいにあるコーヒーショップの店員、小野寺のことが気になっていた。
彼に週末のデートを誘われ浮かれていたが、発情期の予兆で休憩室で眠ってしまう。
目を覚ますと自分にかけられていた小野寺のパーカーから香る彼のフェロモンに我慢できなくなり、発情を促進させてしまった!
他の男に捕まりそうになった時小野寺が駆けつけ、彼の家の保護される。青葉はランドリーバスケットから誘われるように彼の衣服を拾い集めるが……。
ハッピーな気持ちになれる短編Ωバースです
かつらぽーん
うりぼう
BL
かつらがぽーんと吹き飛ぶ。
王道学園物と見せかけた普通の学園もの。
一人の生徒を生徒会の連中その他が気に入り、親衛隊連中が色々と嫌がらせをしている。
そんな騒動の最中の話。
※王道とみせかけた普通学園
※親衛隊あり
生徒会補佐様は平凡を望む
慎
BL
※《副会長様は平凡を望む…》 の転校する前の学園、四大不良校の一つ、東条自由ヶ丘学園でのお話。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
『───私に喧嘩売ってるのでしょうか?』
南が前の学園で、副会長として君臨するまでの諸々、武勇伝のお話。
本人の主張する平凡とは言い難い非日常を歩む… そんな副会長サマもとい南が副会長になるまでの過程と副会長として学園を支配… 否、天下の副会長様となって学園に降臨する話である──。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
本物のシンデレラは王子様に嫌われる
幸姫
BL
自分の顔と性格が嫌いな春谷一埜は車に轢かれて死んでしまう。そして一埜が姉に勧められてついハマってしまったBLゲームの悪役アレス・ディスタニアに転生してしまう。アレスは自分の太っている体にコンプレックを抱き、好きな人に告白が出来ない事を拗らせ、ヒロインを虐めていた。
「・・・なら痩せればいいんじゃね?」と春谷はアレスの人生をより楽しくさせる【幸せ生活・性格計画】をたてる。
主人公がとてもツンツンツンデレしています。
ハッピーエンドです。
第11回BL小説大賞にエントリーしています。
_______
本当に性格が悪いのはどっちなんでしょう。
_________
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる