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オネイロスサーカス団⑦ ◆

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「あつ…い。」

何時もより熱いシグリの体温が腕の中から伝わってくる。
酔っ払いどもから回収したシグリはもう既に酔い潰れていて、まるで寝起きの時のように頭が回っていない。

ボンヤリとされるがままオレに体重を預けて、大人しく腕の中に収まる。

「どれ程、調子に乗って飲んだんだ、お前は。」

回収しに行ったシグリのいたテーブルには酒瓶と四つの酒樽が転がっていた。五人だけでどれだけ飲んでいるんだと見た瞬間、呆れたが…。その呆れが吹っ飛ぶ程の光景が目に映り込んで来た。シグリがクラヴィスに甘えるように身を寄せる姿だった。

一瞬、この飲み屋ごと消し去ってしまおうかとクラヴィスに殺意が湧いた。しかし、飲み屋ごと消し炭にするとシグリにまで被害が及ぶ。それは本意ではない。


なんとか自分でも感じた事のない激しい怒りを抑えて、シグリを回収した。


酔っ払いとは本当に世話の焼けるものだ。
宿に連れて帰って、水を飲ませてやってもまだボーとしていて、寝ろとベッドに投げても「寝たくない。」と駄々を捏ねる。

「やら。ありゅとも一緒に寝なきゃ、やら。」

正直、馬車での移動やその他諸々のやるべき事の所為で、オレの本来の仕事が滞っている。徹夜してでも片付けたい所なのだが、酔っ払いは抱き付いて離さない。

何よりタチが悪いのは構ってと抱き付くこの男がとても可愛く見える事。その上、酔ってほんのり赤く染まる肌色や熱を孕む琥珀の瞳がこちらを誘っているように見える。

「おい、阿呆。どれ程、羽目外して飲んだんだ。」

「あー。アルトが二人いりゅぅー。」

「オレはこの世で一人だ。」

調子に乗って飲み、クラヴィスに絡んでいた阿呆はこちらの気も知らずにカラカラと笑っている。そんな姿に苛立ち、溜息をつき顔を逸らすと酔っ払って笑っていた筈なのに急に表情が陰る。

「何で僕を見てくれにゃいの? 」

オレの顔に手を伸ばして固定して、うるうると潤み輝く琥珀の瞳がオレを見つめる。
その瞳はやはり宝石のように美しく、手を伸ばして触れたくなる衝動を必死に抑える。

アルコールが回って火照り、熱に浮かされた琥珀の瞳。ベッドの上で、女の子座りでこちらを少し見上げる姿。

やはり、お前はオレを誘っているのかと言いたくなるのをグッと抑える。

相手は酔っ払い。
何も考えてなどいない。クラヴィスに絡んで誘っているように見えたのもただ酔っ払って絡み酒をしていただけだ。顔は抑えられていて逸らせないので必死に視線を色気を撒き散らす阿呆から逸らす。

「そんなに僕と目を合わせりゅのはイヤ? 僕の気持ちはアルトにとってめいわく? 」

目を逸らせば、いきなりホトホトと泣き出し、ギョッとする。絡み酒に笑い上戸の次は泣き上戸。

慌ててシグリの涙に濡れる頰に手を伸ばせば、むわんっと酒の香りが口の中に広がり、柔らかなものが唇に触れる。

「やら。振らにゃいで。僕を捨てにゃいで。アルトの隣に居たい。好き。好きなにょ。……アルトが好き。」

グズグズと何を怖がっているのか泣きじゃくり何度も縋るように唇を重ねる。

「んっ……。分かってる。アルトが…恋愛を煩わしく思ってるのは…。でも…、でも。」

そう言えばシグリを隷属させたその日にそんな事を言ったな、と思い出していると、ガチャガチャとシグリがオレのズボンのベルトを外して下すとズボン通り越して下着の中に手を突っ込んだ。

何しているとシグリの手を引き抜くとシグリの手はオレのを握っていて、何の躊躇いもなくオレのを口に頬張……ろうとしたが口が思った以上に小さく、その口はオレのの先端をパクリと咥えた。

口が小さくて全く入らなかった割には舐めるのは上手く気持ちいい所を狙って舌で扱ってくる。

「お、おい…。離せ……ん、酔っ払い。」

「やら…。」

「一旦っ……、離せっ。」

聞く耳を持たない酔っ払いは頭をグッと押しても離れない。最近旅先の慣れない環境での仕事やコイツの事でご無沙汰な分、堪え性のないオレのは張り詰め、今にも暴発しそうだった。

何とか泣きじゃくりながらオレのを舌で扱い続けるシグリを引き剥がすが、時既に遅く、シグリの顔にべったりと白濁としたものが掛かった。

内心、頭を抱えて、もっと早く引き剥がせなかった事を後悔しているとシグリが頰についた白濁をペロリと舐めた。

「こーゆー事が嫌悪感なく出来る程好きなにょ。アルトはやかもしれにゃいけど…。」

「……………。」

グスリッとシグリが泣く。
そんな中、頭に響くのは自制心が崩壊し掛けている音。

しかし、まだ負ける訳にはいかない。
このままオレの気持ちを勘違いし続けるのは面白くない。

スッと頰に手を伸ばし、顔に掛かった白濁を拭う。唇を重ね、深く口付けを落とすと口の中に苦味が広がる。まさか自分の、の味を味わう日が来るとは…。コイツじゃなきゃ魔術で焼き尽くしてる所だ。

「んっ…ふ、…ぁふ…。ん、ん…。」

舌で口内を撫で、首筋から鎖骨まで滑るように指の腹で触れると目を細めて気持ちよさそうな表情を浮かべる。ツゥーと二人の間に銀糸が引き、プツンと切れる頃には涙は引っ込み、その綺麗な琥珀の瞳がオレを映していた。

「確かに恋愛は煩わしい。振り回されるのはお前一人で充分だ。」

そう耳元で囁き、耳の淵を甘噛みするとビクビクと身体が震えて、甘い声が漏れ出した。
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