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『商品』達
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「何だ…これは。」
それは初めて見る生物で、その生物達はこれから殺処分される動物のように怯え切っていた。
姿形は人間で、しかし人とは違う獣の耳と尻尾を持つ存在。
「ふわぁっ。半獣人がイッパイとよ!! 」
異様な光景に言葉を詰まらせていると隣でモモが驚きの声を上げた。
「半獣人? 」
「獣人と人族ば間に産まれた子供の総称と!!」
問うとモモは自分の知識を披露するように誇らしげな顔をした。だが、何故その半獣人が檻の中に入れられているか問うと「うーん。」と首を傾げた。
モモに聞かなくても檻に入れられている理由は想像出来た。山賊が人を生かして取っておく理由なんて想像もしたくなかったが。
ー 売るのか。コイツらを…。
人身売買。
いかにも悪党がやりそうな事だ。
檻に入れられている半獣人は女子供が多い。
自身より弱い者を虐げて、大切なものを取り上げて、自身は強いと胡座をかく。
「反吐が出る…。こんなん、男のする事じゃねぇ。」
女子供は守る対象だ。自身より弱いものを虐げて何が楽しい?
ざわりと身体の奥底から殺意に近い怒りが湧き上がってくる。モモは俺の顔を見るとゴクリと息を飲んだ。
「お、お前達。そ、それは俺達の商品だぞ。」
ブルブルと震えながら逃げた筈の犬の獣人が短剣を構えていた。
果敢に向かって来ようとしたが、湧き上がる感情剥き出しの顔で見やると固まり、近づけば後退りをして、ついには壁まで追い詰めた。
「……鍵を寄越せ。」
ガンッと顔の真横の壁蹴ると一瞬、犬の獣人が白目を剥き、意識を失いそうになったので胸ぐらを掴んだ。
「首輪と檻の鍵を寄越せ。」
「ひゃ…、ひゃい。」
犬の獣人は足に力が入らなくなったのか。ズルズルと壁を這いずるようにへたり込んだ。
そして震える手で懐から鍵の束を取り出した。
鍵を分取り、モモに投げるとモモはカチャカチャと檻の鍵を開け始めた。
犬の獣人は鍵を渡すとお役御免とばかりに意識を飛ばそうとしたのでもう一度胸ぐらを掴んだ。
「テメェの頭は何処だ。」
「そ、そこの扉のお、奥に…。」
犬の獣人が指差したのは犬の獣人が先程出て来た扉。
頭張ってる癖に隠し通路の奥でのうのうと胡座かいてるとは流石悪党の親玉と言ったところか。
「モモ…。」
「あい。ここば、自分にたーんと任せて行っととよ!! 」
俺の気持ちを汲んでモモはニッと笑顔を浮かべて送り出す。ミドリと言い、本当に俺の舎弟は出来た奴ばかりだ。
頭をぶっ飛ばさなければ気が治まらねぇ。
ここはモモに任せて進もうと扉に手を掛けた時、ふと檻の中にいた半獣人の少女と目が合った。
先程の怯えた目とは違い、縋るような目でこちらを見ている。
その目に大丈夫だとニッと笑みで返すと大きな目に大粒の涙が溢れ、慌てた。泣く程怖い顔だったか、俺?
「と、とにかく後は任せたぞ、モモ。」
その少女の涙の世話も気さくなモモにぶん投げる形で扉を潜ると、「ホント、不器用ば人と。」とモモの苦笑が後ろから聞こえた。
しょうがないだろ。
正直、涙苦手なんだよ。泣かれるとどうしていいか分かんねぇんだよ。特に女は。
半獣人達が囚われていた部屋を出るとまた通路が続いていた。その通路の長さにもしかしたら山賊の頭はモグラの獣人かもしんねぇなと鼻で笑う。
暫く進んで行くと通路の突き当たりに扉が見えた。
ご丁寧に鍵が掛かっているその扉を蹴り壊すと部屋の中はもぬけの殻。
「子分置いて逃げやがったのか、モグラ野郎ッ。」
額に青筋が浮かび、頭に血が昇る。
怒りで熱くなった顔をふわりと風が撫で、はたと風を感じた方を見やる。
しかし、風を感じた方角は壁で、窓や扉の類はない。
ー まさか。
風を感じた壁をトンッと叩くとカコンッと音がして扉が現れた。最初は隠し通路だとはしゃいでいたが、何度もあるとただただ苛つく。
「成程な。ここから逃げた…と。」
まだ会った事すらないがある意味トリなんちゃらや白龍よりも癪に触るモグラ野郎。
ー 逃す訳ねぇだろ。絶対、とっ捕まえてしばいてやる。
そう心に決めて、これまた長い外へと繋がっているだろう通路を全力で走った。やがて通路は想像通り外へと繋がっていて、見慣れた森の風景が出迎える。
外はもう既に日が暮れていて真っ暗。
動物や魔物が寝静まり、ガシャンッガシャンッと金属と何かがぶつかる音が静かな森に響いていた。
その音を追うと重そうに檻を運ぶ狼っぽい獣人が茂みに隠れながら逃げ果せようとしていた。穴蔵の奥に住んでいたのはモグラ野郎ではなく、狼野郎とは。
スンッと空気を嗅ぐ仕草を見せると狼野郎はこちらに振り返った。
「頭が子分置いて逃げてんじゃねぇよ。」
タンッと茂みを避けるように木の幹を蹴り、跳躍する。
狼野郎の頭目掛けて飛び蹴りの体勢に入った。
それは初めて見る生物で、その生物達はこれから殺処分される動物のように怯え切っていた。
姿形は人間で、しかし人とは違う獣の耳と尻尾を持つ存在。
「ふわぁっ。半獣人がイッパイとよ!! 」
異様な光景に言葉を詰まらせていると隣でモモが驚きの声を上げた。
「半獣人? 」
「獣人と人族ば間に産まれた子供の総称と!!」
問うとモモは自分の知識を披露するように誇らしげな顔をした。だが、何故その半獣人が檻の中に入れられているか問うと「うーん。」と首を傾げた。
モモに聞かなくても檻に入れられている理由は想像出来た。山賊が人を生かして取っておく理由なんて想像もしたくなかったが。
ー 売るのか。コイツらを…。
人身売買。
いかにも悪党がやりそうな事だ。
檻に入れられている半獣人は女子供が多い。
自身より弱い者を虐げて、大切なものを取り上げて、自身は強いと胡座をかく。
「反吐が出る…。こんなん、男のする事じゃねぇ。」
女子供は守る対象だ。自身より弱いものを虐げて何が楽しい?
ざわりと身体の奥底から殺意に近い怒りが湧き上がってくる。モモは俺の顔を見るとゴクリと息を飲んだ。
「お、お前達。そ、それは俺達の商品だぞ。」
ブルブルと震えながら逃げた筈の犬の獣人が短剣を構えていた。
果敢に向かって来ようとしたが、湧き上がる感情剥き出しの顔で見やると固まり、近づけば後退りをして、ついには壁まで追い詰めた。
「……鍵を寄越せ。」
ガンッと顔の真横の壁蹴ると一瞬、犬の獣人が白目を剥き、意識を失いそうになったので胸ぐらを掴んだ。
「首輪と檻の鍵を寄越せ。」
「ひゃ…、ひゃい。」
犬の獣人は足に力が入らなくなったのか。ズルズルと壁を這いずるようにへたり込んだ。
そして震える手で懐から鍵の束を取り出した。
鍵を分取り、モモに投げるとモモはカチャカチャと檻の鍵を開け始めた。
犬の獣人は鍵を渡すとお役御免とばかりに意識を飛ばそうとしたのでもう一度胸ぐらを掴んだ。
「テメェの頭は何処だ。」
「そ、そこの扉のお、奥に…。」
犬の獣人が指差したのは犬の獣人が先程出て来た扉。
頭張ってる癖に隠し通路の奥でのうのうと胡座かいてるとは流石悪党の親玉と言ったところか。
「モモ…。」
「あい。ここば、自分にたーんと任せて行っととよ!! 」
俺の気持ちを汲んでモモはニッと笑顔を浮かべて送り出す。ミドリと言い、本当に俺の舎弟は出来た奴ばかりだ。
頭をぶっ飛ばさなければ気が治まらねぇ。
ここはモモに任せて進もうと扉に手を掛けた時、ふと檻の中にいた半獣人の少女と目が合った。
先程の怯えた目とは違い、縋るような目でこちらを見ている。
その目に大丈夫だとニッと笑みで返すと大きな目に大粒の涙が溢れ、慌てた。泣く程怖い顔だったか、俺?
「と、とにかく後は任せたぞ、モモ。」
その少女の涙の世話も気さくなモモにぶん投げる形で扉を潜ると、「ホント、不器用ば人と。」とモモの苦笑が後ろから聞こえた。
しょうがないだろ。
正直、涙苦手なんだよ。泣かれるとどうしていいか分かんねぇんだよ。特に女は。
半獣人達が囚われていた部屋を出るとまた通路が続いていた。その通路の長さにもしかしたら山賊の頭はモグラの獣人かもしんねぇなと鼻で笑う。
暫く進んで行くと通路の突き当たりに扉が見えた。
ご丁寧に鍵が掛かっているその扉を蹴り壊すと部屋の中はもぬけの殻。
「子分置いて逃げやがったのか、モグラ野郎ッ。」
額に青筋が浮かび、頭に血が昇る。
怒りで熱くなった顔をふわりと風が撫で、はたと風を感じた方を見やる。
しかし、風を感じた方角は壁で、窓や扉の類はない。
ー まさか。
風を感じた壁をトンッと叩くとカコンッと音がして扉が現れた。最初は隠し通路だとはしゃいでいたが、何度もあるとただただ苛つく。
「成程な。ここから逃げた…と。」
まだ会った事すらないがある意味トリなんちゃらや白龍よりも癪に触るモグラ野郎。
ー 逃す訳ねぇだろ。絶対、とっ捕まえてしばいてやる。
そう心に決めて、これまた長い外へと繋がっているだろう通路を全力で走った。やがて通路は想像通り外へと繋がっていて、見慣れた森の風景が出迎える。
外はもう既に日が暮れていて真っ暗。
動物や魔物が寝静まり、ガシャンッガシャンッと金属と何かがぶつかる音が静かな森に響いていた。
その音を追うと重そうに檻を運ぶ狼っぽい獣人が茂みに隠れながら逃げ果せようとしていた。穴蔵の奥に住んでいたのはモグラ野郎ではなく、狼野郎とは。
スンッと空気を嗅ぐ仕草を見せると狼野郎はこちらに振り返った。
「頭が子分置いて逃げてんじゃねぇよ。」
タンッと茂みを避けるように木の幹を蹴り、跳躍する。
狼野郎の頭目掛けて飛び蹴りの体勢に入った。
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