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僕はいやな胸騒ぎを感じ、扉を開いた。



 「アラステア!!」



 僕の声だけが広い部屋の中に響く…
 ……そこに彼の姿はなかった。




 「アラステア……!!」



どんなに探しても彼の姿はどこにも見当たらない。



 僕は使用人達を呼び集め、皆で彼を探したが……
彼の行方は、とうとうみつからないままだった




彼は、煙のように消え去った……




何の痕跡も残さずに……







 (おまえは、彼がどうなったかを見ていたんだろうな……)




 吸い込まれそうな鏡の前で僕は心の中で呟いた。



 使用人の話によると、アラステアは町で買ったこの鏡をたいそう気に入り、高価な鏡を奪われないようにこの部屋に鍵を取り付けたのだと言う。
そんなことはもちろん彼の詭弁だ。
 彼は、金の値打ちを気にするような者ではない。



 不意に、僕の頭の中にあの時のあの声がよみがえる……



『僕は君が大好きだよ……』




あの時、彼はなぜそんなことを口にしたんだろう。



 「アラステア……
僕は信じてる……いつかまた君に出会える日が来ることを……!
 絶対に君をみつけだす!」




 僕は鏡に向かって、そう声を上げた。




 ~fin
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