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 診療所から戻った彼は、やはりその晩もあの部屋へ向かった。
この前と同じように、僕は息を潜め彼の後をつけていく。



まるで同じだった。
 部屋に入ると、聞こえて来る二人分の小さな声……

時には彼には不似合いな程の明るい笑い声を交え、二人の低い声は途切れることはない。



 (アラステア……大丈夫だよ。
 僕が必ず……)



 僕は大きく息を吸い込むと、力任せに扉を叩いた。



 「アラステア、僕だ、スコットだ!
ここを開けてくれ!
アラステア…お願いだ!!
 開けてくれ!」



それは意外な程すぐだった。
 扉は開かれ、そこには驚いたような顔をしたアラステアが立っていた。



 「スコット…どうしてここに…!?あっ……」

 僕はアラステアの華奢な身体を抱きしめた。
 彼の顔を見たら、反射的にそうしていたんだ。
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