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左の道

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「お母さん、どうしたの?
あ、とにかく向こうへ!」



信号の青が点滅していた。 
若い女性の声で、止まってた時がまた動き出したような気がした。
俺は、しっかりと幸の手を握り、歩道に向かう。 



幸は、涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。 



「……なんて顔してんだよ。」

「あなたのせいでしょ。」

あぁ、この声だ。
昔よりちょっと低くはなっているけど。



「幸…おまえ、本物の幸なのか?」

「それは私の聞きたいことよ。
翔さん…あなた、本物の翔さんなの?」

「翔さんって…お母さん、まさか、この人…」



若い女はじっと俺をみつめた。 



「翔さん…紹介するわ。翼よ。」

初対面なのに、その女は不思議とどこか懐かしいような気がした。
そうだ…さっきからこの子は幸のことをお母さんと呼んでいる。



「皆に良く言われるのよ。
目元があなたにそっくりだって…」

「えっ…!?」

年の頃は、俺が幸と別れた時の年くらいか…
つまり、それは…



「俺の…俺の子なのか!?」

「ね、翼…本当に鈍い人でしょう?
ケイジだったら、あなたの顔を一目見ただけで気付くでしょうに。」

そう言って、幸は笑った。 
涙に濡れた顔で…
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