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タイムトリップ

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「やめろよ。腹の皮がよじれる!」

ケイジの話に、俺達は涙を流しながら、笑い転げた。 



布団に入り、良い気持ちで寝ていたら、ケイジから電話がかかってきた。 
曲が出来たから、夕方、家に来いとのことだった。



俺は、『ヴォルケイノ』というハードロックのバンドをやっている。 
ケイジはギタリスト、俺はヴォーカリストだ。 
詳しくは知らないが、ケイジの親父さんは会社経営をしているらしく、両親に、地下にスタジオのある一軒家を建ててもらい、奴はそこに一人で住んでいる。 
身寄りもなく、かつかつの生活をしている俺とはえらい違いだが、あいつは偉ぶったところがまるでない。



その家は、俺達の練習スタジオであり、溜まり場でもあった。
何かというと、そこに集まり、酒を飲んでは馬鹿話に花が咲く。 
俺達みたいに仲の良いバンドも珍しいと思う。 
バンドのメンバーっていうのは、皆、個性が強いから、けっこう衝突するもんなんだが、
俺達は本当にうまくいっている。
そのせいで練習に身が入らないっていうのが、ちょっとした悩みなんだけど。



今日も今日とて、ここへ来てから、皆ずっと飲みっぱなし、笑いっぱなしで、肝心の新曲はまだ聞かせてもらってない。



「それはそうと、ケイジ…どんな曲が出来たって?」

そう言ったのはベースのシンだ。
奴は、俺達の仲で一番年上で、一応、リーダーでもある。



「曲?あ、そうだったな。」

ケイジが立ち上がったのをきっかけに、俺達もスタジオに移動した。
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