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「あっ!!」



どくどくと大量の血液が送りこまれる音が聞こえた。
からからになった口を開き、空気を求める。



 私の目に映ったものは、見知らぬ部屋の天井…



そうだ…
ここは逃げ延びた宿の小部屋。
ぼんやりとよみがえる昨夜の記憶……



このところ、ほとんど眠ってなかったから、昨夜は睡眠薬を飲んで眠ったんだ。
これからの逃亡にために体力をつけておきたいと思ったから。



 (……夢だったのね…
なんて、怖い夢……)



 最悪の夢だったけど、でも、夢だということがわかって、私は心の底から安堵した。
 大きく息を吐き出し、私はゆっくりと上体を起こした。



 「……聖子…
こんな所にいたんだね……」



 聞き馴染んだその声に、私の肩が小さく弾んだ。



 「聖子……
なぜなんだ?
 僕はこんなに君のことを愛しているのに……」



 私は恐る恐るその声の方を振り向いた。



 「うっ!」

 振り向くと同時にかけられた布きれが、私の首にじわじわと食いこむ。



 「聖子……
僕もすぐに逝くから……心配ないよ。」



 苦しみはそう長いものではなかった。



 (……これも夢…よね?)

そう思ったのが最後の思考。






だけど……



私は、そのまま二度と目を覚ますことはなかった……



~fin~
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