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 「母さん、開けて!
 私、聖子よ!
 早く開けて!」



 私は、あの人の食事に睡眠薬を混ぜて眠らせ、実家に戻った。



 「聖子…!
どうしたの!?
あら?あんた一人?
 秋彦さんは一緒じゃないの?」

 「いないわ!私一人よ!」



 驚く母を中へ押しこみ、私は扉に鍵をかけた。



 「聖子……一体、どうしたのよ。」

 「母さん…私…私ね……」

 今まで誰にも言えず、ずっと我慢していた感情が一気に込み上げ、涙に変わった。



 「まぁ、話は中でゆっくり聞くわ。」

 母は私も肩を優しく抱いて、居間へ連れて行った。



 「聖子…どうしたんだ?」

 「お姉ちゃん、どうしたの?
 大丈夫?」

もしかしたら今にもあの人が目を覚ましてここにやってくるかもしれない。
 早く話したい気持ちで心は焦っているのに涙は止まらないし、両親も希美もあの人には良い印象を持ってるからどんな風に話せば良いのかと戸惑った。



 「あのね…か、母さん…私ね…」

 「ちょっと待ってね、今、お茶を持ってくるわ。
あ、ちょうどおいしいお菓子もあるのよ。」

 「か、母さん……私、な、何もいらない。
ちょっと話があるだけだから…」

 呼吸を整えながら、私はそう声をかけた。



 「お姉ちゃん、何かあったの?」

 「秋彦君と喧嘩でもしたのか?」



 二人がいたら話しにくい。
 父さんはあの人にとても恩義を感じているし、希美も繊細な子だから、怖がるようなことは言えない。
だから、出来れば母さんにだけ話したかったのに、母さんはなかなか戻って来ない。



 「母さん、私……」

 痺れをきらして立ち上がった時に、ようやく母が戻って来た。



 「はい、お待たせ。
お茶でも飲んで落ちつきなさい。」

そんなことをしている場合じゃない。
こうしてるうちにも、あの人が……



「母さん、私…母さんと二人で話したい事があるの。」

 「なんだ、聖子。
 父さんには言えないことなのか?」

 「ごめんなさい。
 今回だけは母さんだけと話させて!」

 母さんは父さんに向かって小さく頷き、そして私に向き直った。



 「わかったわ。
それじゃあ、お茶を飲んだら…そうね。
そこの公園にでも行きましょうか?」

わざわざ外に出ることもなかったけど、父さん達に立ち聞きされないようにとでも考えてくれたのかと思い、私はそれに頷いた。

ちょっと着替えて来るという母を待って、私達は歩いてすぐの公園に向かった。
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