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タクシーに乗って、三つ程先の駅に着いた私は、そこから列車に乗り込んだ。
 行き先は、まだ一度も行ったことのない場所。
 行き先なんてどこでも良かった。
 楽しみにいくわけじゃないんだから。



とにかく、今の私には誰一人頼れる人はいない。
 不安だらけだったけど、私にはこうするしかなかった。
この方法しか残されていなかった。



どうなるかはわからないけど、なんとかして住みこみで働ける場所を探して…
そして、しばらくほとぼりをさましてから友達に連絡しようと考えていた。
それまでみつからないように身を潜めることが出来るかどうか…
そこにすべてがかかっている…



(まさか、こんな事になるなんて……)



 車窓を流れていく町の灯りをぼんやりとみつめながら、私は数年前の幸せな日々を思い出していた。

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