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「なるほど、そういうことだったか…」
アーサーを裏山に残し、私は、バルロー家を再訪した。
そして、アダム様に大嘘を吐いた。
アーサーは、なんらかの理由で少々頭がおかしくなっており、それで家族にも見捨てられて、あの山に置いてきぼりにされた気の毒な男なのだと…
私と会った時は、自分が馬だと言い張り、草を食べて見せたと…
アダム様はそんな嘘をいとも簡単に信じてくれた。
「私が昨日までバルロー様のお屋敷で働いていたと申しますと、自分はバルロー家の長男だと言い始めまして…それで、あんな騒動に…」
「そうだったのか…
後になって思ったのだが…確かに、あの顔つきは、我がバルロー家の者といってもおかしくはない…不思議なものだな。」
「え?ええ…確かにそうですね。」
不思議も何も、アーサーはバルロー家の者だからね。
「それにな…アーサーという者が、遠い祖先にいたのだ。」
「そうなんですか?」
アーサーなんて、ありふれた名前なのに、まさか、アダム様は歴代のバルロー家の人の名前を全部覚えてるっていうの??
「祖父に聞いた話なのだが…
何代も前にアーサーという者がおり、その者はある時、神隠しにあったかのように突然姿を消したらしいんだ。」
「そ、そうなんですか…」
何代昔の事か知らないけど、言い伝えられてるなんてすごいね。
「彼には、ローザという許嫁がいた…」
(ローザ…?あ、確かにアーサーがそんな名前を言っていた…
そっか、あれは許嫁のことだったのか…)
「ローザは、アーサーのことを深く愛していた。
いなくなったアーサーの行方を熱心に探してまわっていたようだが、そのローザもある時突然、行方がわからなくなったそうだ。
アーサーのことで、世を儚んで自ら命を絶ったのではないかと言われているが、結局、遺体はみつからなかった。
つまり、アーサーもローザもこの世から煙のように消えてしまったという話だ。」
「そんなことが…」
可哀想に…ローザさんは、アーサーのことをそれほど愛してたんだな。
まさか、魔女に手を出して、白馬に変えられたなんて知るはずないもんな…
「なるほど、そういうことだったか…」
アーサーを裏山に残し、私は、バルロー家を再訪した。
そして、アダム様に大嘘を吐いた。
アーサーは、なんらかの理由で少々頭がおかしくなっており、それで家族にも見捨てられて、あの山に置いてきぼりにされた気の毒な男なのだと…
私と会った時は、自分が馬だと言い張り、草を食べて見せたと…
アダム様はそんな嘘をいとも簡単に信じてくれた。
「私が昨日までバルロー様のお屋敷で働いていたと申しますと、自分はバルロー家の長男だと言い始めまして…それで、あんな騒動に…」
「そうだったのか…
後になって思ったのだが…確かに、あの顔つきは、我がバルロー家の者といってもおかしくはない…不思議なものだな。」
「え?ええ…確かにそうですね。」
不思議も何も、アーサーはバルロー家の者だからね。
「それにな…アーサーという者が、遠い祖先にいたのだ。」
「そうなんですか?」
アーサーなんて、ありふれた名前なのに、まさか、アダム様は歴代のバルロー家の人の名前を全部覚えてるっていうの??
「祖父に聞いた話なのだが…
何代も前にアーサーという者がおり、その者はある時、神隠しにあったかのように突然姿を消したらしいんだ。」
「そ、そうなんですか…」
何代昔の事か知らないけど、言い伝えられてるなんてすごいね。
「彼には、ローザという許嫁がいた…」
(ローザ…?あ、確かにアーサーがそんな名前を言っていた…
そっか、あれは許嫁のことだったのか…)
「ローザは、アーサーのことを深く愛していた。
いなくなったアーサーの行方を熱心に探してまわっていたようだが、そのローザもある時突然、行方がわからなくなったそうだ。
アーサーのことで、世を儚んで自ら命を絶ったのではないかと言われているが、結局、遺体はみつからなかった。
つまり、アーサーもローザもこの世から煙のように消えてしまったという話だ。」
「そんなことが…」
可哀想に…ローザさんは、アーサーのことをそれほど愛してたんだな。
まさか、魔女に手を出して、白馬に変えられたなんて知るはずないもんな…
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