上 下
26 / 42

26

しおりを挟む
「ま、まさか~…」

 『だって、どうにもこの子おかしいんだもん。』

 「ま、まさか、そんなこと…」

 『あら、知らないの?魔法使いがいた時代には、そんなことはしょっちゅうあったわよ。』

しょっちゅうって、そんなまさか…



「もし、そうだったらどうするのよ!?」

 『別にどうもしないわ。私には関係ないことだもの。』

なんだ、こいつ…意外と冷たいんだな。



 「関係ないって…それはあんまりじゃないの?」

 『だって、本当に関係ないじゃない。
 私がこの子と会ったのは今日が初めてよ。』

 「そりゃあそうだけど…もしも、本当にそうだったら、ほっとくなんてあまりにも可哀想じゃない。」

 『だったら、あんたが魔法を解いてやれば良いじゃない。』

 「そ、そりゃあそうしてあげたいけど、私、魔法を解く呪文を知らないもの。」

 『クレララクルルルを三回よ。』

 「なんですって?」

 『良い?しっかり覚えなさいよ。
 魔法が解けることをイメージしながら、クレララクルルルを三回唱えるのよ。
でも、それはごく初歩的な呪文だから、効果の程はわからないけどね。』

ちっちゃいくせに態度はでかい。
 多少、ムッとしながらも、教えられた呪文を頭に叩き込んだ。



 (魔法が解けるイメージ、か…難しいな。)



 私は、幼い頃に読んだ絵本を思い起こした。
 魔法使いの呪いによって、醜いひきがえるに変えられた王子様が、とてもハンサムな王子様に戻るシーンを…
王女様が呪文を唱えると、白い煙がぼんと立ち込めて…



「クレララクルルルクレララクルルルクレララクルルル」

 別に動きは指定されてなかったけど、その場のノリで私は指をくるくると回しながら呪文を唱えた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】王太子妃の初恋

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。 王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。 しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。 そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。 ★ざまぁはありません。 全話予約投稿済。 携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。 報告ありがとうございます。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...