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 「どうぞよろしくお願いします!」



 次の日の朝、私は意気揚々とバルロー家のお屋敷に向かった。
いつもはスッピンだけど、今日は特に念入りにお化粧もして…



(あ、ここだな。)



 思った通り、そこはとっても立派なお屋敷。 
こんな大きなお屋敷ならかなりの人手が必要なはず。 
きっと雇ってもらえると私は確信した。 



 応対してくれたのは、執事のライオネスさん。
ほとんどが白くなった髪をぴしっとまとめた中年の男性だ。 



 「デイジー・スチュワートさん…でしたね。
 年はおいくつですか?」

 「さ……に、27です。」

 反射的にサバを読んでしまった。 
 昨夜見たダニエル様は私よりお若いように見えたから…つい、ちょっとでも若く言いたくて…乙女心ってもんよね。 
ま、三つくらいたいしたことない。
お互い、好きになったら、年齢のことなんて気にならないはずだもの。 



 「27…ですか…」

 「は、はい。」

じっとみつめられ、私はいたたまれなくなって、そっと俯いた。
まさか、サバ読みがバレた!? 
 心臓がドキドキして、口から飛び出しそうだ。



 「今までにメイドの経験は?」

 「はい、いくつものお屋敷で働いた経験があります。」

 「わかりました。では、早速、今日から働いていただきましょう。
 着いてきて下さい。」

 「は、はいっ!」

 私はほっとして、ライオネスさんの後に続いた。 
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