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闇の声

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町の中には、今日もまた、怒り、憎しみ、妬みといった負の感情が溢れていた。



さて、次はどいつに憑りつこうか…
面白い獲物がいないかと、私は物色を続けた。



その時…まだ小さな子供が、唐突に私の前で立ち止まった。



まさか、こやつ…



「おじちゃん…何してるの?」



やはり、そうだったか…
人間の中にはきわめて稀に、私の姿が見える者がいる。



 『おまえ、私が見えるのだな?』

 「うん、見えるよ。」



その子供は、初めて会った時のエレナよりも、さらに真っ白な心をしていた。



 『私が怖くないか?』

 「怖くないよ。どうして?」

 私は思わず苦笑した。



 『おまえ…名は何と言う?』

 「アルバート。」

 『そうか、アルバート…おまえ、この世の王になりたいとは思わないか?』

 「おう…?」

 『何もかも思いのままに出来る者のことだ。』

 子供は頷き、にっこりと笑った。



 「うん!なりたい!僕、おうになりたい。」

 『そうか、わかった。
では、これから一緒に生きよう…
おまえに、最高の人生を与えてやるぞ!』

 「ありがとう、おじちゃん…!」



 契約は完了した。
 今度の獲物は少しばかり変わった者となったが、なかなか楽しい時が過ごせそうだ。



 『では、アルバート…
まずは手始めに……』



 私は囁く…



闇の声を…



人々を『幸せ』にする言葉を…



白き者を黒く染め上げる闇の言葉を……



~fin.
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