上 下
9 / 35
審判の棺

しおりを挟む
「これから俺たちはどうしたら良いんだ?
こんな田舎の村に来てくれる牧師様なんていないだろうし、この村にはエドガー牧師みたいに物知りで頼れる人はいない。」

 「そんなこと言ったって仕方ないだろ。
 牧師様は死んじまったんだから…」

 皆、エドガー牧師が死んだことで、絶望と悲しみに打ちひしがれていました。




 「……みんな、聞いたことはないか?
 審判の棺のことを…」

 「審判の棺?なんだ、そりゃ?」

 「俺も詳しいことは知らん。
 子供の頃に、ばあちゃんが教えてくれたんだ。教会の地下には審判の棺というものがあって、そこに死者を入れたら生き返るんだって。」

 「死んだ者が生き返るだって?そんな馬鹿な話があるか。」

 「審判ってことは、生き返らせるか生き返らせないかの審判が下るってことか?」

 「おそらくそうじゃないか?」

 「おいおい、おまえまでそんな馬鹿馬鹿しい話を信じるのか?」

 村の青年達は、一人が言い出した審判の棺のことでざわめきました。



 「とにかく、一度、教会の地下に行ってみないか?
もしも、そこに棺があったら…そこに牧師様を寝かせてみよう。」

 「そうだな、とにかく行ってみるか。」


 青年達は、地下に向かいました。
 地下はずっと捨て置かれていたようで、黴臭く、空気もじっとりと湿った感じがしました。



 「ないぞ、そんなもの。」

 「おい、こっちを照らしてくれ。」

 青年達は、棺を探しましたが、地下にはずっと昔に置かれたであろう、埃の積もった棚や空の瓶が転がっているだけでした。
やはり、そんなものはなかったのだ、ただの噂話だったのだと皆が思い始めた頃、一人の男が、小さな扉をみつけました。
そこには南京錠がかけられていました。
 青年が力任せに扉を揺さぶると、錆びた南京錠は簡単に吹っ飛びました。



 「うわっ!」

 最初に入った青年が声を上げました。
 狭い部屋の中に、ぽつんと棺が置かれていたのです。



 「ほ、本当にあった!これが審判の棺に違いない!」

 青年達は、すぐに引き返し、エドガー牧師の遺体をその棺の中に横たえました。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

蒼き轍

その子四十路
ライト文芸
幼なじみの紅美と真青はすぐ、些細なことで喧嘩になる。 一緒にいる時間が長すぎて、素直になれない。 大学進学のために上京する紅美は、真青に想いを告げようと決める。 “幽霊が出る”という噂がある廃駅で、ふたりは向き合うが…… ──今夜、わたしは真青に告げる。ありったけの想いを。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

幽子さんの謎解きレポート~しんいち君と霊感少女幽子さんの実話を元にした本格心霊ミステリー~

しんいち
キャラ文芸
オカルト好きの少年、「しんいち」は、小学生の時、彼が通う合気道の道場でお婆さんにつれられてきた不思議な少女と出会う。 のちに「幽子」と呼ばれる事になる少女との始めての出会いだった。 彼女には「霊感」と言われる、人の目には見えない物を感じ取る能力を秘めていた。しんいちはそんな彼女と友達になることを決意する。 そして高校生になった二人は、様々な怪奇でミステリアスな事件に関わっていくことになる。 事件を通じて出会う人々や経験は、彼らの成長を促し、友情を深めていく。 しかし、幽子にはしんいちにも秘密にしている一つの「想い」があった。 その想いとは一体何なのか?物語が進むにつれて、彼女の心の奥に秘められた真実が明らかになっていく。 友情と成長、そして幽子の隠された想いが交錯するミステリアスな物語。あなたも、しんいちと幽子の冒険に心を躍らせてみませんか?

【ショートショート】おやすみ

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

一輪の廃墟好き 第一部

流川おるたな
ミステリー
 僕の名前は荒木咲一輪(あらきざきいちりん)。    単に好きなのか因縁か、僕には廃墟探索という変わった趣味がある。  年齢25歳と社会的には完全な若造であるけれど、希少な探偵家業を生業としている歴とした個人事業者だ。  こんな風変わりな僕が廃墟を探索したり事件を追ったりするわけだが、何を隠そう犯人の特定率は今のところ百発百中100%なのである。  年齢からして担当した事件の数こそ少ないものの、特定率100%という素晴らしい実績を残せた秘密は僕の持つ特別な能力にあった...

処理中です...