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あれは気紛れに出向いたパーティでのことだった。




 上っ面だけの愛想笑いを浮かべて、愚かな会話を交わす…そんなパーティ等大っ嫌いだった。
だが、その日は、たまたま気が向いた。
ただ、退屈だったからなのかもしれないが、素晴らしいピアニストを呼んであるから良かったら来てくれないかと声をかけられ、ついその誘いに乗ってしまったのだ。
 私は元々音楽が好きだったから、『素晴らしいピアニスト』という言葉に反応してしまったのかもしれない。



「おぉ、レオナール…来てくれたのか!?」

「それほど、驚くことか?」

「……君のパーティ嫌いは有名だからな。」



 主催者のオスカーは、人懐っこい顔で私を出迎えた。
だが、そうでない者も多いことは奴らの視線でわかっていた。
それも当然のことだ。
 私は、人間共に忌み嫌われる悪魔なのだから。



オスカーは、人の善い顔をしていながら裏では悪魔と契約している。
だからこそ、私とも面識があるのだ。
そんなことがありながらも、オスカーには人望があった。
パーティを開けば、いつも大盛況だ。
それは奴の財力のおかげなのか、あるいは敵に回したら面倒なことになると考えてのことなのか…奴の取り巻きたちは、彼の黒い噂を知っても、オスカーから離れることはなかった。
オスカーの手前もあるのか、パーティ客は私にも表面上は微笑みかける。
だが、その視線は冷ややかなもので、心の奥底では私を畏れ、嫌っていることがありありと感じられた。



しかし、そんなことは気にする程のことでもない。
 悪魔と人間の関係とは昔からそういうものなのだ。
 素晴らしいピアニストとやらの演奏を聞いたら、さっさと暇しよう…私はそう考えていた。
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