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第四の依頼
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「いえいえ、貴重な体験をさせていただきましたよ。」
『いもいも……』
その後、意識を回復した女の人に話を聞いてみると、エドガーの推測通り、その人は今度の依頼者・さむいもさんだった。
さむいもさんは僕達を家に連れて行ってくれて、家の中の焚火にかざすと、おじさんもリッチーの剣の氷もじわっと溶けていったんだ。
もちろん、おじさんの身体もなんともなくて、僕らはほっと胸を撫で下ろした。
その上、さむいもさんは僕らに夕飯までご馳走してくれた。
さつまいものてんぷらに、さつまいもの煮もの、さつまいもの炒め物、さつまいもの味噌汁という胸の焼けるメニューだったけど、どれもとてもおいしかった。
『どぞ。』
食後にはさらにスイートポテトを出してくれた。
甘いものがあんまり好きじゃないリッチーは、それをそっとおじさんの方へ押しやった。
「それで、さむいもさん…依頼のことなんですが……
神芋というのは、どこにあるんですか?」
『それは、この町の洞窟の先。』
「なんだ、そんなことなら、簡単じゃないか。」
リッチーがそう言うと、さむいもさんは首を振った。
『洞窟いっぱい、いもいっぱい。
全部に訊くのすごく大変。』
「洞窟いっぱい、いもいっぱい??」
「誰に何を訊くと言うんだ?」
僕らにはさむいもさんの言ってることが、何のことだかよくわからなかった。
「とにかく明日、洞窟に行ってみればわかるでしょう。」
その晩は、さむいもさんの家に泊めてもらうことになり、僕はお風呂まで使わせてもらった。
皆に臭い臭いと言われていたから、それは本当にありがたいことで…
その上、さむいもさんが僕にローブを貸してくれた。
ここに来るまで、魔物と戦うことはなかったし、青いきのこが落としたお金は拾って来なかったから、僕らは無一文に近かった。
だから、まだ服だって買ってもらえるはずもなかったし、さむいもさんに会えなかったら、僕はまだ全裸のままでいなきゃならないところだった。
(ありがとう、さむいもさん……)
「いえいえ、貴重な体験をさせていただきましたよ。」
『いもいも……』
その後、意識を回復した女の人に話を聞いてみると、エドガーの推測通り、その人は今度の依頼者・さむいもさんだった。
さむいもさんは僕達を家に連れて行ってくれて、家の中の焚火にかざすと、おじさんもリッチーの剣の氷もじわっと溶けていったんだ。
もちろん、おじさんの身体もなんともなくて、僕らはほっと胸を撫で下ろした。
その上、さむいもさんは僕らに夕飯までご馳走してくれた。
さつまいものてんぷらに、さつまいもの煮もの、さつまいもの炒め物、さつまいもの味噌汁という胸の焼けるメニューだったけど、どれもとてもおいしかった。
『どぞ。』
食後にはさらにスイートポテトを出してくれた。
甘いものがあんまり好きじゃないリッチーは、それをそっとおじさんの方へ押しやった。
「それで、さむいもさん…依頼のことなんですが……
神芋というのは、どこにあるんですか?」
『それは、この町の洞窟の先。』
「なんだ、そんなことなら、簡単じゃないか。」
リッチーがそう言うと、さむいもさんは首を振った。
『洞窟いっぱい、いもいっぱい。
全部に訊くのすごく大変。』
「洞窟いっぱい、いもいっぱい??」
「誰に何を訊くと言うんだ?」
僕らにはさむいもさんの言ってることが、何のことだかよくわからなかった。
「とにかく明日、洞窟に行ってみればわかるでしょう。」
その晩は、さむいもさんの家に泊めてもらうことになり、僕はお風呂まで使わせてもらった。
皆に臭い臭いと言われていたから、それは本当にありがたいことで…
その上、さむいもさんが僕にローブを貸してくれた。
ここに来るまで、魔物と戦うことはなかったし、青いきのこが落としたお金は拾って来なかったから、僕らは無一文に近かった。
だから、まだ服だって買ってもらえるはずもなかったし、さむいもさんに会えなかったら、僕はまだ全裸のままでいなきゃならないところだった。
(ありがとう、さむいもさん……)
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