上 下
61 / 192
隣町を目指して

しおりを挟む
死んだらどうなるのか訊こうとした時、リッチーが慣れた手付きで剣を引き抜いた。
この数日間で、リッチーの剣の技術は格段にあがったっていうのか、なんだかすごく格好良いんだ。
エドガーの魔法も最初より明らかに威力を増した気がする。
 何も変わってないのは僕だけみたいに思えるけど、自分のことって意外とよくわからないもんだから、きっと僕もそれなりに構えが上達してるはずだ。



 「う……」

わぁ!リッチーの胸が斜めに切り付けられた。
 血が飛び散り、ものすごく痛そうだ……
って、鎧を突き破るなんて一体どういう爪なんだ。
 鎧があんな風に切り付けられるんだから、僕の肉襦袢なんてきっと全く役には立たないだろう。
 後列で良かった……と、僕がほっと胸を撫で下ろしていると、おじさんが薬草をリッチーに投げ付けた。
 僕はいつも構えだけだから、薬草を使うと言ったんだけど、残念なことに僕にはいつが薬草の使いどころかよくわからない。
 誰かが怪我をしたらすぐに使ってたら、そんなかすり傷で使っちゃだめだと言われたり、あやうく手遅れになりそうになって怒鳴られたりで、僕はそういう係りさえさせてはもらえなくなった。
 僕がもっとうまく使えたら、今でももう少し薬草が残ってたかもしれないし、おじさんももっと戦えたかもしれない。



 (僕って、やっぱり駄目な奴……)



わぁ!
 自己嫌悪に浸る間もなく、今度はエドがーが腕をやられた。
エドガーは、膝を着き唇を噛み締めて苦痛に顔を歪ませる。
あぁぁ……やだやだ、痛そう……酷い出血じゃないか。
おじさんが迷わず最後の薬草を投げ付け、それと同時にエドガーがまたすっくと立ち上がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、マリアは片田舎で遠いため、会ったことはなかった。でもある時、マリアは、妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは、結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話

束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。 クライヴには想い人がいるという噂があった。 それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。 晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...