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隣町を目指して

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 「なんだ、街道をはずれても魔物なんて出て来やしないじゃないか。」

 「こんなことなら、もっと早くこっちに来ても良かったかもしれないな。」

 「ま、とにかく、このままあの森を……」



リッチーがそう言いかけた時、どこからか青いボールが飛んで来て、その途端、リッチーは腰の剣を引き抜き、エドガーとおじさんは杖を構え、そして、僕だけはその理由がわからずにただ呆然と立ち尽して……



「いーさん、何ぼーっとしてるんだ!構えろ!」

 「か、構える?」



 僕は反射的に腰に手をやった。
だけど、そこにはもこもこした手触り以外、何もない。
そうだ…僕はまだ武器を持っていない。
つまり僕の武器は素手だけだ。
……とはいっても、僕に武道の心得は全くない。
 喧嘩らしい喧嘩さえしたことがない。
そんな僕の拳は、リッチーが以前装備していたアルミの剣よりも遥かに弱いはずだ。
なのに、構えろというのか!?
たとえば僕の顔がもっといかつくて、鋲や鎖のじゃらじゃらしてる服でも着ていたら、はったりくらいはかませたかもしれない……
だけど、肉襦袢にはげヅラの僕がどんな強そうな構えをした所で、はったりにもなりゃしない。
っていうか、それ以前に、なんで構える必要があるんだ?
 誰か、その答えを僕に教えてくれ!

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