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初めての依頼

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「あ…あの…」



 不意にかけられた声に僕が顔を上げると、そこには若い女の子が花束を抱えて立っていた。



 「ゆ、勇者様、頑張って下さい!」

 女の子は僕に花束を押しつけるようにして、走り去った。



 「おっ!いーさん、モテるねぇ…」

リッチーに肘で小突かれても、僕は目の前の現実をまだ受け止めることが出来なくて…



(え?え?えーーーっ!?
ぼ、僕に花束…?う、うそーーー!)



 当然、こんなことは初めてで…
心臓は口から飛び出しそうになるし、足はがくがくするし…



「いーさん…ヨダレ…」

 「見苦しい…鼻水も出ているぞ。」



 「……えっ!?」



 僕は焦って顔を拭った。
 放心しすぎて、僕はだだ漏れになっていたようだ…
だって、仕方ないじゃないか!
 若い女の子から花束をもらうなんて、生まれて三十三年目にして初めての出来事なんだから!
 今日のこの日を花束記念日としたいくらいだ。



 (良かった…この世界に来て本当に良かった…!)



 心からそう思った瞬間だった。
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