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はじまりのはじまり

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僕は思わず、心の叫びを声に出してしまってた。
だ、だって、このおじさんが…僕と同級生だなんて……

確かにたまにいる…
学年に一人か二人だけど…
まるで先生みたいな同級生。
 三十を過ぎると、長い友達の筈の頭髪と早くにお別れする奴もけっこう出て来て、そういう奴は一気に老けたりもするけど、このおじさんは頭髪はそれなりなのに、醸し出す雰囲気が100%中年だ。
それはある意味すごいんだけど…



「いーさんは、確かに年齢よりお若く見えますね。
 私にもぜひ若さの秘訣を教えていただきたいものです。」

いや、そういう言いまわしがすでにおじさんだから…
それに、僕が若く見えるわけじゃない。
あんたが老け過ぎてるんだ。



 「あははは…
馬鹿は若く見えるって言いますから…」

しかし、本心を言えるはずもなく、僕はそんなことを言って誤魔化した。



 「そういや、そうだな!」

リッチーの言葉に、愛想の悪いエドガーまでもが口元に笑みを浮かべる。



ばかーーー!
 今のは謙遜だ!
それに、おまえ達二人が笑う所じゃない!
 年上である僕に気を遣って、「そんなことないですよ~」の一言くらい言えよ!



 「そんなことはありませんよ。
いーさんは、私達のパーティのリーダーですし、頼りにしてますよ。
これからもどうぞよろしくお願いしますね。」

……やっぱり、おじさんは大人だ。
だてに老けてるわけじゃない。



その後もお茶を飲みながら、僕達は他愛ない会話を交わした。
エドガーだけは、お茶を飲んだらすぐに部屋に戻ったけれど、二人とはなんとなく打ち解けて話せて、初めての異世界の夜も心細い思いをせずにすんだ。


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