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あんな出会いさえなければ…

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 (あぁ、つまんない……)

 僕はゲーム機の電源を落とし、蓋を閉じた。
もう三度もボスに負け続けている。
 今身に付けているもの以上に強力な装備はまだ買えないから、今はレベルを上げるしかない。
だけど、なかなか経験値は上がらなくて、単調で退屈だ…



「これは夕飯のおかずだ!おまえにやるものはないからな!」

 人間を少しも恐れることなく近寄って来た灰色の鳩に、僕は冷たい言葉を吐いた。
なんとなく苛々した気持ちの八つ当たりだ。
 鳩は、まるで僕の言葉を理解したかのように回れ右をして飛び立って行った。

 平日のお昼過ぎ…鳩が飛び去った今、この公園には僕以外もう誰もいない。
 当然だよな…皆、働いてるんだもの。
でも、僕だって半年前まではちゃんと働いてたんだ…バイトだけど…
それが、不況のあおりを受けて工場が倒産…
おかげで僕は今完全な無職なんだ。



 両親は、大らかというのかなんというのか…
内心はどう思ってるのかわからないけど、特に小言を言うことはない。
だけど、さすがに小遣いまではくれないから、僕は毎日遠くの激安スーパーまで買い物に行って、近くで買った場合との差額を懐にしまうという…



まるで中学生のやるようなことをしている僕は、すでに三十路を何年か過ぎている…



自分でもそんな自分が情け無い!
……僕はこんな駄目人間じゃなかった筈だ!
そりゃあ、両親や姉さん程優秀ではなかったけど、学校でも特別勉強が出来ないとか運動がだめだとか、人間関係がうまく築けないなんてこともなく、至って平均的に過ごして来た。
バレンタインデーには少ないとはいえチョコをもらったこともあるし、彼女という存在に近い者がいた時期だってある。
 大学を出てからはちゃんと正社員として働いてたし、秀でたものはなくとも、特別劣ってるということもなかった。

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