上 下
25 / 50
side芳樹

しおりを挟む
(落ち着け。紗羽はもう過去の人だ。
 動揺する必要なんてない。)



 何度もそう言い聞かせた。
だけど、どうしても心はざわめく。
なぜならば、今日は保護者会。
つまり、紗羽がここに来るからだ。



 僕のことに気付くだろうか?
どんな態度を取られるだろうか?
 何日も前から、僕はそんなことばかり考えては落ち着けない日々を過ごしていた。



 (さぁ、行くぞ!)



もう教室には、保護者達が集まっているはずだ。
 職員室から1年3組の教室まではすぐだ。
どれだけゆっくり歩こうともあっという間に着いてしまう。



 入学式の時よりもさらに緊張していた。
 扉の前で、僕は深呼吸をした。
それでも落ち着かないまま、扉を開く。



 扉を開いた瞬間…僕には、紗羽がわかった。
まるで、白黒の世界の中に、紗羽だけがカラーでいるかのように、彼女の姿が目に飛び込んで来たのだ。



そして、それは紗羽も同じなのだとわかった。
 彼女は眼を大きく見開き、僕のことをじっとみつめていたから。



 時が止まったようだった。
けれど、椅子から立ち上がった保護者の動きで、僕の時間はまた動き出した。



 「は、はじめまして。このクラスの担任をしている岡本芳樹と言います。」



これ程動揺しながらも、まともな話が出来たのは、今まで真面目に教員という仕事を続けて来たおかげだろうか?



ほとんど無意識に近い状態で、僕は話すべきことを話した。
おそらく失敗はなかったと思う。



 「それでは、ここからは個人面談に移ります。
 相葉さん以外の方は、廊下でお待ちください。」



 一人一人と面談していく間も、僕はずっと紗羽のことを考えていた。
 会うのが怖くて…それなのに、会いたくて…
複雑な想いに戸惑いながら、僕は面談をこなしていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...