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side芳樹

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特に隠すつもりはなかったのだけど、僕が紗羽と付き合ってることがクラスメイトに知られたら、彼女は、趣味が悪いとか言われるんじゃないかと心配だったんだ。
だって、僕は特に格好良いっていうタイプじゃなかったし、スポーツや勉強が出来るわけでもなかった。
しかも、口下手で、趣味は絵を描くことだけっていう地味なタイプだったから。
だから、僕は、二人でいるところを出来るだけ人に見られないように心がけていた。



それに、僕の親は僕がとにかく真面目だと思い込んでいて、将来、公務員にさせたいと思っていた程だった。
そんな想いを刷り込まれていたせいか、僕は自然と親の期待を裏切らないようにと、考えていたようだ。
だから、付き合ってる人がいるなんて、親にはとても言えなかった。
 結局、僕は知らず知らずのうちに、彼女とのことを周りに隠そうとしていたのかもしれない。



 「高校も同じところに行こうね!」

 「うん、頑張ろう!」



 僕らは、地元の公立高校を目指し、一緒に勉強した。
そして、二人共合格した。
 残念ながら、クラスは一緒になれなかったけれど、そんなことはさして大きな問題ではなかった。
 僕は、美術部、彼女は文芸部に所属した。
ところが、部活の曜日が、僕は月水金、彼女は火木だったために、会える時間が少なくなり、そのせいで彼女は部活をやめた。
 僕もやめようとしたのだけれど、彼女が、僕には絵の才能があるからやめないでと言ってくれたので、僕はその言葉に甘えた。
 才能があるなんて思えなかったけど、僕は彼女と同じくらい、絵を描くことが好きだったから。
 彼女には部活をやめさせておきながら、自分だけ続けるのは申し訳ないとは思いながらも、結局、甘えてしまったんだ。



 僕らの仲は順調だった。
 僕は、彼女としか付き合ったことはなかったけれど…いや、そうだからなのか、将来は彼女と結婚しようと考えていた。
 大学を卒業したら、すぐにでも一緒に暮らしたいと、漠然とそんなことを考えていた。

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