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愛彩

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「本当にどうもありがとうございました。
またお願いするかもしれませんが、よろしくお願いします。」

 「はい、こちらこそ、よろしくお願いします。」



とても感じの良い人だ。
 売り上げがどうこうってことではなく、私を信頼して下さることが、本当に嬉しい。
そのお客様のおかげで、その日は一日中、楽しくてたまらなかった。



いつものように、実家で夕食を食べさせてもらい、莉緒と一緒に帰って来る。
 私も莉緒も、このサイクルにもうすっかり慣れた。



 家に戻ってしばらくすると、友人の瑞穂から電話があった。
 高2の時からの長い友達だ。
 私が結婚してからはあまり会わなくなったけど、LINEや電話はまだ続いていた。



 「愛彩、久しぶり!元気だった?」

 「うん、元気だよ。瑞穂は変わりない?」

 「うん、まぁね…実は、今日は愛彩にお願いがあって電話したんだ。」

 「お願い…?」

 「うん、最近、合コンで知り合った人がいるんだけど、その人たちと今度一緒に遊びに行くんだ。
それで、愛彩に一緒に行ってもらえないかなって。」

 「え?でも、私なんかが着いて行ったら邪魔なんじゃないの?」

 「まだ残念ながら付き合ってるってわけじゃないし、その人も友達連れて来るから。
……どうかな?」

 考えてみれば、男性と遊びに行ったことなんて、もう何年もなかったと気が付いた。
 結婚してた頃は当然としても、彼が亡くなって三年経つ…
三年という歳月は、どうなんだろう?
 彼を想い、まだ喪に服すべきなのか、それとも新たな人生を考えても良いものなのか?
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