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 「なんだよ、酷いじゃないか。
そんなに気合い入れて来るなら、そう言ってくれないと。」

 帰りに、三木と今日初めて会った桜田という人と三人でコーヒーを飲みに行った。



 「気合いなんて入れてないよ。」

 「良く言うぜ。いつもと全然違うじゃないか。
しかも、介護士の彼女とLINEの交換したんだろ?」

 「え?なんで知ってるんだ?」

 「見てたもの。
 良いなぁ…俺、あの子、けっこうタイプだったんだよなぁ…」


 三木は、そう言って頭を掻いた。
 意外にも、連絡先の交換をした者は僕だけのようだった。



 「彼女と付き合うのか?」

 「まさか。友達って感じじゃないか?」

 「え?あんまり気に入ってないのか?」

 「気に入ってないってわけじゃないけど…
特別惹かれたってわけでもない。」

 「おぉーっ!色男は言うことが違うねぇ…」



 今日の三木はいやに突っかかって来る。
ってことは、この服装は本当に正解だったってことなんだろうか?
 気合いを入れて来たように思われたってことは、多分、そういうことだよな。



 (……彼女のお陰だな。)



 僕の脳裏に、あの店員さんの顔が浮かんだ。

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