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「そのチェスターコート、すごく格好良いですね。
パンツともすごく合ってますし。
……素敵です。」

 「え……?」

 僕は慌てた。
 彼女は、本気で言ってるのか?
それとも、逆に、似合ってないから嫌味で言ってるのだろうか?
 何か言わなきゃ…何か…



「あ、あなたのそのスカートも綺麗ですね。」

 僕は咄嗟にそんなことを口にした。
 特に、目に付いたというわけでもなかったけれど、上は何の柄もないベージュのブラウスだったし、それよりは小花柄のスカートを誉めた方が良いだろうと思ったのだ。



 「ありがとうございます。
 実は、今日のために買ったんです。」

 「そ、そうなんですね。良くお似合いです。」

 良かった…咄嗟に言ったことが喜んでもらえた。



 「あの……良かったら…LINEの交換、お願い出来ませんか?」

 「え?」

 僕は再び焦った。
まさかそんなこと言われるなんて思ってなかったから。



 特に、彼女に好意を感じたわけではなかったけど、でも、彼女もそうなのかもしれない。
 僕を、友達のひとりとして考えてくれたのかもしれない。



 「あ…は、はい。喜んで。」

 僕は、どこか無理した愛想笑いを浮かべながら、彼女とLINEの交換をした。


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