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愛彩

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莉緒が三歳になる少し前…
夫が、急な病で他界した。
 最近ちょっと体調が良くないと言い出して、検査をしたら悪いものがみつかって…
まだ治療の方針も決まらないうちに、彼は急に逝ってしまった。



しばらくは、その現実を受け入れることが出来なかった。
あまりにも呆気なくて…
夫は、痩せたりやつれたりする前に亡くなってしまったから、元気な頃の記憶しかなくて…
夜になったら「ただいま。」と言って帰って来るような…そんな気がしていた。



だけど、彼が帰って来ることはなく…
数か月後、私は、莉緒を連れて、実家に身を寄せた。
 貯金もあったし、生命保険も入ってたから、すぐに生活に困るということはなかったけれど、両親が心配してしょっちゅう訪ねて来てたから。



それに、自分では気づいてなかったけれど、その頃の私は、やはり精神的にどこかおかしかったようだ。
 両親はそれが心配で、しょっちゅう見に来ていたらしい。
 冷静でいたつもりでも、やはり大きなショックを受けていたのだろう。
 両親と一緒に暮らせたことで、きっと私はずいぶんと救われたのだと思う。
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