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新しい世界
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「ご馳走様でした。」
「たいしたものがなくてすまんかったな。
ま、わしらが食べるのはいつもこんなもんばっかりなんじゃよ。」
「とてもおいしかったですよ。」
それはお世辞というわけではなく、フォリアンリョークは老婆の出してくれた自家製の野菜のスープや素朴な味わいの手作りパンを本当にうまいと感じていたのだ。
「もしもまた来てくれることがあったら、その時にはパイでも焼いてやろうな。」
「パイ…ですか?」
「あぁ…あんた、パイは嫌いなのかい?」
「いえ…僕はまだパイを食べたことがないので…」
フォリアンリョークは、自分でもなぜだかわからないまま、本当にことを答えていた。
老婆は少し驚いたような顔をしていたが、やがて微笑み、ゆっくりと頷いた。
「そうかい。じゃあ、今度会う時には、その季節の果物を使って、美味しいパイを焼いてあげるよ。」
「ありがとうございます。
楽しみにしています。」
ただの社交辞令だとわかっていても、老婆はその言葉に嬉しそうに微笑んだ。
「ところで、それはあんたの剣かい?」
老婆は、フォリアンリョークが背中に背負っていた大剣を見ながら率直に尋ねた。
「いえ…これは僕の剣ではありません。」
「だろうね。
あんたの体格には大きすぎる。
じゃあ、誰かの剣を渡しに行くのかい?」
フォリアンリョークは不意に視線を宙に浮かせ、まるで何かを思い出すかのように遠くをみつめる。
「……まぁ、そんな所です。
ただ、これを渡す相手がどこにいるのか、まだ皆目わからないのです。」
「それは大変だね。
どうやって探す気なんだい?」
「とにかくあてはないので…あちらこちらを旅しながら地道に探していくつもりです。
お婆さん、このあたりで人の集まる大きな町といえばどこでしょうか?」
「あんた地図は持ってるのかい?」
「いえ……」
老婆は肩をすくめ、立ち上がると、戸棚の中から黄ばんだ古い地図を取り出し、それをテーブルの上に広げる。
「この村はこのあたりだ。
小さな村だから名前も何も載ってないけど、多分ここらだよ。
ここをずーーっと東に行くと、街道に出る。
街道沿いにいくつかの町を過ぎていくと……ここがイーライの町だ。
イーライの町はとても都会で賑やかな町だそうだよ。
わしはもちろん行ったことはないがね。
大きな町で探すつもりなら、まずはここに行ってみたらどうだい?」
老婆は皺がれた指で地図を指差しながら説明し、フォリアンリョークは、老婆のその提案にゆっくりと頷いた。
「ご馳走様でした。」
「たいしたものがなくてすまんかったな。
ま、わしらが食べるのはいつもこんなもんばっかりなんじゃよ。」
「とてもおいしかったですよ。」
それはお世辞というわけではなく、フォリアンリョークは老婆の出してくれた自家製の野菜のスープや素朴な味わいの手作りパンを本当にうまいと感じていたのだ。
「もしもまた来てくれることがあったら、その時にはパイでも焼いてやろうな。」
「パイ…ですか?」
「あぁ…あんた、パイは嫌いなのかい?」
「いえ…僕はまだパイを食べたことがないので…」
フォリアンリョークは、自分でもなぜだかわからないまま、本当にことを答えていた。
老婆は少し驚いたような顔をしていたが、やがて微笑み、ゆっくりと頷いた。
「そうかい。じゃあ、今度会う時には、その季節の果物を使って、美味しいパイを焼いてあげるよ。」
「ありがとうございます。
楽しみにしています。」
ただの社交辞令だとわかっていても、老婆はその言葉に嬉しそうに微笑んだ。
「ところで、それはあんたの剣かい?」
老婆は、フォリアンリョークが背中に背負っていた大剣を見ながら率直に尋ねた。
「いえ…これは僕の剣ではありません。」
「だろうね。
あんたの体格には大きすぎる。
じゃあ、誰かの剣を渡しに行くのかい?」
フォリアンリョークは不意に視線を宙に浮かせ、まるで何かを思い出すかのように遠くをみつめる。
「……まぁ、そんな所です。
ただ、これを渡す相手がどこにいるのか、まだ皆目わからないのです。」
「それは大変だね。
どうやって探す気なんだい?」
「とにかくあてはないので…あちらこちらを旅しながら地道に探していくつもりです。
お婆さん、このあたりで人の集まる大きな町といえばどこでしょうか?」
「あんた地図は持ってるのかい?」
「いえ……」
老婆は肩をすくめ、立ち上がると、戸棚の中から黄ばんだ古い地図を取り出し、それをテーブルの上に広げる。
「この村はこのあたりだ。
小さな村だから名前も何も載ってないけど、多分ここらだよ。
ここをずーーっと東に行くと、街道に出る。
街道沿いにいくつかの町を過ぎていくと……ここがイーライの町だ。
イーライの町はとても都会で賑やかな町だそうだよ。
わしはもちろん行ったことはないがね。
大きな町で探すつもりなら、まずはここに行ってみたらどうだい?」
老婆は皺がれた指で地図を指差しながら説明し、フォリアンリョークは、老婆のその提案にゆっくりと頷いた。
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