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新しい世界
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(ここが、人間界……)
それはごく唐突な変換だった。
フォリアンリョークの歩き続けた石橋の先が、ある地点から白い靄のようなものに包まれていた。
まるでその先を隠すようなその靄を見たフォリアンリョークは、そこが人間界と冥界との境だろうと推測した。
そこに入ればどのようになるのか…
その先はどうなっているのか…
そんなことを少しも考えなかったわけではなかったが、これは自らが望んだ道。
フォリアンリョークは、控えめに深呼吸をすると、立ち止まることなく靄の中へ足を踏み入れた。
何事もなかった。
気抜けする程、何の反応もなかった。
しかし、瞬きをするよりも短い時の間に、あたりの状況はすっかり変わっていた。
その場所は、木々に囲まれ太陽の光さえもほとんど届かない鬱蒼とした森の中。
白い靄さえ消えていた。
フォリアンリョークは、五感を伝わって感じられる感覚に、不思議と胸が熱くなる思いを感じていた。
柔らかな土の感触…
青臭いにおいに混じった甘い香り…
頬を撫でる心地良い風…
そして、木々の隙間から差しこむわずかな木漏れ日の明るさとどこか懐かしい温かさ…
(良い所だったんだな…
話に聞いていたのとは全然違う…)
普通の人間なら、こんな薄暗い森の中を歩くだけで気味悪がるのだろうが、フォリアンリョークの住む世界はそれよりもまだ薄暗かった。
風もなく、いつもなにかが焦げたようなにおいが漂っていた。
光などない。
目に映る景色はほとんどが黒っぽい石や岩ばかり。
凍える程ではなかったが、常に肌寒い場所だった。
それしか知らなかったフォリアンリョークにとって、その森は、冥界とは比べ物にならない程気持ちの良い場所に感じられた。
あまりの快適さに、フォリアンリョークは、自分でも気付かないうちに鼻歌を歌っていた。
その行為に一番驚いたのは、他でもないフォリアンリョーク本人だった。
(……浮かれてる?
……この僕が?)
フォリアンリョークは、自分でも意外過ぎる出来事に込み上げる笑いを堪え、森の中を進み続けた。
(ここが、人間界……)
それはごく唐突な変換だった。
フォリアンリョークの歩き続けた石橋の先が、ある地点から白い靄のようなものに包まれていた。
まるでその先を隠すようなその靄を見たフォリアンリョークは、そこが人間界と冥界との境だろうと推測した。
そこに入ればどのようになるのか…
その先はどうなっているのか…
そんなことを少しも考えなかったわけではなかったが、これは自らが望んだ道。
フォリアンリョークは、控えめに深呼吸をすると、立ち止まることなく靄の中へ足を踏み入れた。
何事もなかった。
気抜けする程、何の反応もなかった。
しかし、瞬きをするよりも短い時の間に、あたりの状況はすっかり変わっていた。
その場所は、木々に囲まれ太陽の光さえもほとんど届かない鬱蒼とした森の中。
白い靄さえ消えていた。
フォリアンリョークは、五感を伝わって感じられる感覚に、不思議と胸が熱くなる思いを感じていた。
柔らかな土の感触…
青臭いにおいに混じった甘い香り…
頬を撫でる心地良い風…
そして、木々の隙間から差しこむわずかな木漏れ日の明るさとどこか懐かしい温かさ…
(良い所だったんだな…
話に聞いていたのとは全然違う…)
普通の人間なら、こんな薄暗い森の中を歩くだけで気味悪がるのだろうが、フォリアンリョークの住む世界はそれよりもまだ薄暗かった。
風もなく、いつもなにかが焦げたようなにおいが漂っていた。
光などない。
目に映る景色はほとんどが黒っぽい石や岩ばかり。
凍える程ではなかったが、常に肌寒い場所だった。
それしか知らなかったフォリアンリョークにとって、その森は、冥界とは比べ物にならない程気持ちの良い場所に感じられた。
あまりの快適さに、フォリアンリョークは、自分でも気付かないうちに鼻歌を歌っていた。
その行為に一番驚いたのは、他でもないフォリアンリョーク本人だった。
(……浮かれてる?
……この僕が?)
フォリアンリョークは、自分でも意外過ぎる出来事に込み上げる笑いを堪え、森の中を進み続けた。
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