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旅立ち

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「もう一度だけ聞くけど、本当に後悔しないんだね?」

「あぁ…後悔なんてしない!」

「俺のこと、恨んだりしないよね?」

「しないって言ってるだろ?
そんなにしつこいのなら、やめても良いんだぞ。」

「わ、わかったよ!
じゃあ、行こう!」

ディルカの意地悪な視線に、マッケイは慌ててディルカの背中を押し出した。



この町の早起きな老人達でさえがまだ眠りから覚めない時間に、ディルカとマッケイは闇に隠れるようにして町を抜け出した。
ジュリーには、旅に出るということと、心配をかけてすまないという謝罪の気持ちを認めたごく短い手紙を残した。



「ねぇ、そんなに急いで、どこに行くつもりなのさ?」

小走りというには少し早過ぎる勢いで進むディルカの後を、マッケイは息を切らせながら懸命に着いて行く。



「とりあえず、早いとこ町から離れないとな。
ジュリーに追って来られたら困る。」

「……色男は辛いね。」

「俺達はそんな仲じゃないよ。
それに、この先に船着場があるんだ。
いつ船が来るか知らないけど、もしも運良く船がいたらそれに乗ろうと思ってな。」

「船でどこに行くんだい?」

「知らないよ…
僕は、ずっとあの町で暮らしてて、一番遠くでもその船着場のある町までしか行ったことはないんだ。
それも、行ったのはまだ父さんが生きてた頃だから、もうずいぶんと前のことなんだ。」

「そういえば、あんたは一人暮らしだったな。
そうか…親父さんは亡くなってるのか。
それじゃあ、おふくろさんも?」

ディルカは、マッケイの顔を見ずにただ黙って頷く。



「そっか……ま、そんなこと、珍しくもなんともないよな。
俺なんて、親がどんな人間だったかも知らないんだから。」

ディルカの速度ががくんと落ち、マッケイの顔をじっとみつめた。



「あ…別に同情とかしてほしいわけじゃないから。
世の中には、俺みたいな境遇の奴はいくらでもいるからな。
たいしたことじゃないよ。」

「……そうだな。
……なぁ、夜が開けるまでに隣町まで行けるかどうか賭けないか?」

「隣町?いくらなんでもそりゃあ無理だろ。」

「じゃあ、僕は行ける方に賭けるよ!
よ~し、本気で行くからな!」

そう言うと、ディルカはまだ暗い道を全速力で走り出した。



「ば、馬鹿!危ないぞ!」

マッケイは、風のように走り抜けたディルカの後を、懸命に走り続けた。
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