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道化師
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道化師は、後ろを向いて懸命に笑いをこらえていたが、揺れる肩を見れば笑っていることは誰の目にも明らかだった。
「……笑いたけりゃ笑えば?
僕が君と一緒に旅をして笛さえ吹けば文句はないんだろ。」
ディルカは不機嫌な顔で立ち上がり、尻に付いた土を払い落とす。
「だめよ!」
あたりに響いた大きな声に二人が振り向くと、そこには眉を吊り上げたジュリーが立っていた。
「ジュリー!」
「あれれ?あんたの知り合いなの?」
呑気に話す道化師に、ジュリーはつかつかと歩み寄る。
「あんたねぇ!ディルカにおかしなこと言わないでくれる!?
ディルカもディルカよ!
よく考えてみなさいよ。
こいつは、あんたが玉に乗れなかったら一緒に旅に出て笛を吹け、乗れたら諦めるだなんて、どっちにしてもあんたには良いことなんてないじゃない!」
「あ……」
ディルカは、ジュリーに言われてやっとそのことに気付き、俄かに渋い顔に変わった。
「酷いなぁ…初対面で『こいつ』呼ばわりはないよ~」
道化師は腕を組み、思いっきり頬を膨らませて怒った顔をする。
「ディルカ…こんな奴の言うことなんて気にすることないんだからね。
さ…帰ろうよ。
うちで夕飯食べようよ。」
差し伸ばされたジュリーの片手をディルカはただみつめるだけだった。
「……ディルカ、どうしたの?
まだ、マーサのこと怒ってるの?」
「僕は…嘘吐きじゃない。」
「えっ!?」
言葉の意味がわからず、ディルカの顔をまじまじとみつめるジュリーに、ディルカははっきりとした声で言った。
「どんな条件であっても、僕は彼との勝負に負けたんだ。
……だから、僕は旅に出る。」
ディルカのその言葉に、道化師は歓声を上げ、軽やかなダンスを踊り始める。
「だめ!そんなの絶対だめ!
あんたは絶対にこの町を出ちゃだめよ!」
ジュリーは、ディルカの胸に飛び込み、身体を強く抱きしめた。
ディルカの胸に熱いものが染み渡る。
「ジュリー……」
ディルカはゆっくりとジュリーの身体を引き離すと、悪戯っぽい顔をして片目を瞑って見せた。
「騙された~!
路銀もないのに、僕が、旅になんて出るわけないだろ!?
やーい!泣き虫ジュリー!」
「も、も、もうーーーっ!
ディルカなんて大っ嫌い!!」
ジュリーは、大粒の涙を流しながら、走り去って行った。
「……笑いたけりゃ笑えば?
僕が君と一緒に旅をして笛さえ吹けば文句はないんだろ。」
ディルカは不機嫌な顔で立ち上がり、尻に付いた土を払い落とす。
「だめよ!」
あたりに響いた大きな声に二人が振り向くと、そこには眉を吊り上げたジュリーが立っていた。
「ジュリー!」
「あれれ?あんたの知り合いなの?」
呑気に話す道化師に、ジュリーはつかつかと歩み寄る。
「あんたねぇ!ディルカにおかしなこと言わないでくれる!?
ディルカもディルカよ!
よく考えてみなさいよ。
こいつは、あんたが玉に乗れなかったら一緒に旅に出て笛を吹け、乗れたら諦めるだなんて、どっちにしてもあんたには良いことなんてないじゃない!」
「あ……」
ディルカは、ジュリーに言われてやっとそのことに気付き、俄かに渋い顔に変わった。
「酷いなぁ…初対面で『こいつ』呼ばわりはないよ~」
道化師は腕を組み、思いっきり頬を膨らませて怒った顔をする。
「ディルカ…こんな奴の言うことなんて気にすることないんだからね。
さ…帰ろうよ。
うちで夕飯食べようよ。」
差し伸ばされたジュリーの片手をディルカはただみつめるだけだった。
「……ディルカ、どうしたの?
まだ、マーサのこと怒ってるの?」
「僕は…嘘吐きじゃない。」
「えっ!?」
言葉の意味がわからず、ディルカの顔をまじまじとみつめるジュリーに、ディルカははっきりとした声で言った。
「どんな条件であっても、僕は彼との勝負に負けたんだ。
……だから、僕は旅に出る。」
ディルカのその言葉に、道化師は歓声を上げ、軽やかなダンスを踊り始める。
「だめ!そんなの絶対だめ!
あんたは絶対にこの町を出ちゃだめよ!」
ジュリーは、ディルカの胸に飛び込み、身体を強く抱きしめた。
ディルカの胸に熱いものが染み渡る。
「ジュリー……」
ディルカはゆっくりとジュリーの身体を引き離すと、悪戯っぽい顔をして片目を瞑って見せた。
「騙された~!
路銀もないのに、僕が、旅になんて出るわけないだろ!?
やーい!泣き虫ジュリー!」
「も、も、もうーーーっ!
ディルカなんて大っ嫌い!!」
ジュリーは、大粒の涙を流しながら、走り去って行った。
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