宿星の恋人

１９

アーロンは、ジョイスの住む場所のことを詳しく調べ、早速、ジョイスの元へ向かいました。



 険しい山を越え、流れの急な谷を渡り、アーロンは、ついにジョイスの家に辿り着きました。



アーロンは、体を乗っ取られたリンのこと、過去の異世界に行きたいこと、そして、ギリアム王子を救いたいことをジョイスに話しました。



 「残念ですが、それは無理です。」

 「そなたは魔女であろう？
 魔法の力でなんとか出来るのではないか？
 褒美なら、そなたの望むものをなんでも遣わす。」

 「王子様、魔女にも出来ないことがございます。
 人の生死は魔女にもどうにも出来ません。
それは神のみがお決めになることです。」

 「……そうなのか……」

アーロンは落胆しました。
なんとか、リンを元の体に戻してやりたいという一心で、はるばるジョイスの所まで来たというのに、その望みは絶たれたのですから。



 「王子様…死ぬ運命の者を救うことは無理ですが、過去の異界へお連れすることなら出来ます。」

 「何だと！？」

 「王子様が、魔物になる前のその娘にお会いになり、説得されてはいかがですか？」

 「なるほど、その手があったか！
そうしよう！
 私を、過去の異界へ送ってくれ！」

 「わかりました。
ただし、異界には長い間いてはいけません。なるべく早くお帰りになって下さい。」

 「わかっておる。
 異界に長く留まると、魔物になってしまうのだな？」

ジョイスは、神妙な顔をして、深く頷きました。